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【MLB】ディールは成るか? 一見噛み合わないMLB労使間の主張

 

3年連続の観客の減少が続く中で、何とか集客力アップを目指し選手会と折衝をしているマンフレッドコミッショナー


 ゲームのペースを早めたいMLB側と、選手の待遇を良くしたい選手会側。MLBはトレーニングキャンプが始まったが、水面下で複雑に入り組んだ交渉が進んでいる。1月14日、機構側が選手会へ提案した事案がある。

 先発投手も、リリーフ投手も起用されたら少なくとも3人の打者に投げるか、そのイニングを終わらせねばならないというもの。近年特に試合終盤にマッチアップで有利に立とうと、1イニングに複数のリリーフをつぎ込むことで、どうしても試合時間が長くなる。しかも左投手対左打者などで、バットにボールが当たらず、MLBは11年連続で三振数の記録を更新中。それを食い止め、打ったり走ったりのアクションを増やしたいというのが機構側だ。

 2月8日、ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーは「先発投手の役割を(再び)上げることにもつながる。歴史的に見てこの競技のビッグスターに先発投手は欠かせない。フィールドに長くいられるようにしたい」と会見で説明した。

 早めにブルペン勝負に持ち込んだ方が有利と、近年先発投手は交代が早くなり、18年は200イニングを投げた先発は13人だった。捕手やコーチが試合中にマウンドに行ける回数も2019年が6回から4回、20年が4回から3回と段階的に減らしていこうと提案。20秒のピッチクロックもまな板に載っている。

 これに対し、選手会側の提案は別のエリア。再建チームが多過ぎて、FA市場が停滞してしまっていることを問題視し、何年もチーム成績がひどいチームのドラフト順を下げるアイデアを出している。勝たねばならないとなると、FA市場でお金を使い、実績あるベテランを取るしかない。プラス、ブルージェイズが大物プロスペクト、ブラッド・ゲレロ・JRの昇格をあえて遅らせ、調停やFA権を得るタイミングを遅らせようとしていることについても、近年にできた醜い慣習を終わらせ、実力ある若手がきちんとメジャーに上げてもらえるようにしたい。

 そして一番の目玉はナ・リーグにもDH制を導入すること。ベテラン野手の高給選手を増やすことができる。昨季の投手の打撃成績は打率.115、出塁率.144、長打率.149。機構側の求める、攻撃のアクションを増やすことにもつながるはずだ。しかしながらコミッショナーは8 日の会見で、19年シーズンのDH制導入はなし、6月のドラフトに向けて、新たなルールを設けることもないとした。

 MLBは3年連続観客動員が減少していて、その要因にFA市場の停滞が挙げられるが、「チケット売上に影響しているとは思わない。ただ、チームが勝とうとしていないなどといった事実に基づかないネガティブなコメントが影響している」と反論した。

 明らかにかみ合わない両者の主張。とはいえ1年前は、マーケットの冷え込みに選手たちが激怒し、話し合いは頓挫(とんざ)したが、今年は少なくとも継続中。マンフレッドは「選手会の申し出はお金に関わることで、プレーのルールチェンジとは違うが、それをいかに結びつけていくかだ」と説明。話し合い、時には妥協し、あるいは譲歩を引き出し、何らかのディールをという構えなのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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