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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

ロッテ・藤原恭大が見据える未来と目先の目標の下方修正

 

ロッテのドライチ・藤原は日に日に評価を高めている


「いや、無理ですね(笑)」

 ロッテのドライチ、藤原恭大だ。石垣島での春季キャンプ最終日。入団時に掲げていた「新人王&30盗塁」という目標について現時点での距離感をたずねると、あっさりと自らの前言を撤回した。

「今のレベルから2ランク、3ランクは上がらないと不可能です」

 キャンプの第1クールは自慢の打撃で苦しんだ。プロのスピードと間合いにタイミングが合わず、すべてのボールに振り遅れてしまう。自分のフォームや体の使い方ばかりに気が向いてしまい、タイミングが取れぬままにスイングしてはコンタクトのポイントがずれていた。

「足を上げるタイミングとかが早過ぎたりしたのですが、それがつかめるようになってからはしっかり振れるようになりました。自分のスイングの中にボールが入り込んでくるというイメージができたのは収穫です」

 そこからは、例え実戦で安打が出ずとも身上の“フルスイング”を貫いてきた。「ヒットが欲しい場面もありますけど、フルスイングをしてヒットが出ることで、何かが変わっていくと思うので」。

 これまで脚力だけに頼ってきた走塁面も、キャンプでは渇望していた“技術”を教わり「『ああ、こういうふうに走るんだ』ということが分かったのは大きいですね」と自らへのスピードへの自信を深めた。実戦で見せる走塁には井口資仁監督も「自分で判断ができている」と確かな評価を与えている。

 守備もそうだ。キャンプでは打撃&走塁に注力していたため、「まだ、これから見えてくる課題があると思う」と語っていたが、2月23日の西武との練習試合(春野)では、3回の二死一、二塁で五番・森友哉の中前へのゴロに対してチャージのタイミングをワンテンポ遅らせることで一走・山川穂高を三塁へと誘い、鮮やかなワンバウンド送球を投じて三塁で封殺した。

「大阪桐蔭の野球は常に相手のスキを狙うもの。それがプロの世界でも生きるということを実感しました」と語っていたように、随所に判断力の高さ、ハイレベルな実戦力を見せつけている。

 それでも、だ。プロのレベルを肌で体感すればするほど、大きなことを簡単には口にしなくなってきている。これまではあえて高い目標を掲げ、公言し、そこに向けて努力とレベルアップを重ねることでその目標を達成してきた。その自負があるにも関わらず。

 評価は着実に高まり、開幕一軍入りはもちろん、開幕スタメンが取りざたされるようになっても、「まずは試合に出ることが一番大事だと思う」と自らの現在地をしっかり見つめている。

 だが同時に、視線を未来に向けながらこうも口にしていた。「いずれはチームの中心選手になっていかなければいけないし、それだけではなく、日本球界を背負うような選手にならないといけない」

 周囲の大きな期待に応えるためには「なりたい」ではなく、「ならないといけない」のだという。自分の現状を冷静に見つめ、時に目先の目標を下方修正しながらも、さらりととてつもなく大きなことを言う。

 将来の「球界を背負うような選手」の1年目。そんな視点で藤原の成長過程を追っていっても、いずれは必ず周囲の期待に応えてくれるのではないか。大きな責任を自ら背負い込みながら、「1年目の選手らしく、がむしゃらに、全力でやっていきたいと思います」と無邪気に笑う姿を見ていると、そんな気になってくる。

文=杉浦多夢 写真=BBM
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