背番号は、ある選手が引退しても、またある選手に受け継がれていく。2019年も新たな後継者が誕生した。その歴史を週刊ベースボールONLINEで振り返っていく。 巨人は松井の前から左の好打者が並ぶ
長くプロ野球記録だったシーズン55本塁打。巨人の
王貞治が1964年に放ったものだが、その29年後となる93年の巨人で、その数字にあやかって「55」を背負ったのが松井秀喜だ。王と同じ左の長距離砲で、高校時代から“ゴジラ”の愛称で呼ばれた怪物バッター。現役時代に王と“ON砲”を形成した
長嶋茂雄監督の指導もあり、松井は不動の四番打者へと成長、3度の打撃2冠を置き土産に海を渡り、
ヤンキースでも「55」を背負うことに。“GODZILLA”の愛称とともに、日米で「55」に左の強打者という印象を残した。
松井の活躍から、
広島の“赤ゴジラ”
嶋重宣や、
オリックスの“浪速のゴジラ”T-岡田(
岡田貴弘)ら、“〜ゴジラ”と呼ばれる「55」の左打者が次々に登場している。
もともと巨人の「55」は淡口憲司、
吉村禎章ら左の好打者が並ぶ系譜。淡口は「35」からの“降格”で、そこから奮起して「35」を奪回した。一方、“50番トリオ”で売り出された吉村にとっては出世番号と言えるだろう。
【12球団・主な歴代「55」】
巨人
久保木清、淡口憲司、吉村禎章、松井秀喜、
大田泰示 阪神 後藤次男(監督ほか)、
清家政和、
大豊泰昭、
スタンリッジ、
陽川尚将☆
中日 杉浦清(監督)、
竹内洋、大豊泰昭、
紀藤真琴、
福田永将☆
オリックス
竹村一義、
石嶺和彦、
萩原淳、
吉井理人、岡田貴弘(T-岡田)☆
ソフトバンク 森中千香良、
池内豊、
大道典良(典嘉)、ペーニャ、
野村大樹☆(2019年〜)
日本ハム 清水信明、根元隆輝、
竹内昌也、
運天ジョン・クレイトン、
難波侑平☆
ロッテ 野口二郎(コーチ)、新谷嘉孝(吉孝)、
大村巌、
神戸拓光、
細川亨☆(2019年〜)
DeNA 森中千香良(通晴)、
永池恭男、
多村仁、
筒香嘉智、
後藤武敏(G後藤武敏など)
西武 石本秀一(コーチ)、
滝内弥瑞生(コーチ)、
垣内哲也、
工藤公康、
秋山翔吾☆
広島
白石静生、紀藤真琴、嶋重宣、
エルドレッド、
松山竜平☆(2019年〜)
ヤクルト 杉浦清、
杉浦享(亨)、
広瀬新太郎、
野口祥順、
村上宗隆☆
楽天 近澤昌志、リック、
西田哲朗(哲朗)、
ディクソン (☆は2019年)
長打力にも磨きをかける秋山
西武・秋山翔吾
ヤクルトの杉浦享(亨)も「55」を巣立った左の強打者。その初代は戦後の中日を支えた同姓の杉浦清の現役最晩年で、中日でも選手、監督として「55」を着けた。
中日では大豊泰昭が松井よりも前に王の55本塁打にあやかって「55」に。大豊にとって王は台湾の英雄。ひたすら王の背中を追いかけ、一本足打法にも挑んだ。そして94年に本塁打王、打点王の打撃2冠に輝き、移籍した阪神でも背負い続けている。
DeNAの筒香嘉智も1年目だけ「55」を着けた左の長距離砲。その系譜には南海と大洋の2チームで「55」を着けた右腕の森中千香良(通晴)がいる。同様に広島と中日の2チームで着けた少数派の右腕が紀藤真琴で、広島の系譜をさかのぼると、人気お笑いコンビ“コント55号”にあやかって着けた左腕の白石静生がいる。
その広島では2019年に松山竜平が後継者となり、左の強打者が並ぶ系譜に参戦。ただ、現役の筆頭格は西武の秋山翔吾だろう。シーズン216安打のプロ野球記録を持つ左の安打製造機だが、ここ数年は長打力も向上。「55」の歴史に、新たな印象を刻む。
写真=BBM