4年ぶりに愛着ある場所へ戻ってきた。2月6日付で母校・早大のコーチに就任した田中浩康氏(元ヤクルトほか)は2月28日からの浦添キャンプに帯同している。
ヤクルトの春季キャンプと言えば浦添市民球場(ANA BALL PARK 浦添)だが、入れ替わる形で同スタジアムを使用しているのが早大だ。沖縄出身で主将・
比嘉寿光(元
広島)が4年時だった2003年に始まって以来、早大の恒例行事となっている。
当時の早大は黄金期である。02年に4年生左腕・
和田毅(現
ソフトバンク)を擁して春秋連覇。和田の1学年下には比嘉のほか、
鳥谷敬(現
阪神)、
青木宣親(現ヤクルト)、
由田慎太郎(元
オリックス)と4人がプロ入りし、その1学年下が田中で、さらに1学年下には
武内晋一(元ヤクルト)がいた。沖縄での合宿を経た早大は03年、春秋ともリーグ戦を制し、部史上初の4連覇を遂げている。
今回で14回目。V4を経験している田中にとって、浦添とは“故郷”のようなものだ。
「浦添には大学3年時からお世話になっています。プロでも(ヤクルトに在籍した)12年のうち11回。人生のうちで1年くらいは、ここで生活していた計算になります。1年の始まりは“ここ”、いう位置づけですので、背筋が伸びる思いです」
早大時代、二塁手だった田中コーチは東京六大学リーグ戦で通算102安打。昨秋までに同リーグで過去32人しかいない100安打は大変な実績だが、1年春から4年秋まで4年間8シーズンで全95試合に出場したこともさらに大きな価値がある。大学卒業後は自由獲得枠でヤクルトに入団し、DeNAを含めて計14年プレー。昨シーズン限りで現役を引退し、12月には学生野球資格回復の研修を受けたのち、今年2月5日に認定を受けて、早大からのコーチ就任要請を受けている。
現役時代、堅実な守備が持ち味だった田中コーチは、ノックにおいても基本的な動作の反復をたたき込んでいるのが印象的であった。
「毎晩、学生たちにどんなアドバイスをしようかと考えていると、翌日の練習がワクワクしてくるんです」
すっかり指導者の顔となっているが、昨年までプロの舞台にいたことは大きな強み。1月1日付で就任した
小宮山悟監督の期待も大きく、まだ体も動き、生きた教材が目の前にいるのは、学生にとっても幸運だ。
田中コーチは言う。
「真正面から学生と向き合っていきたい」
学生時代、プロと、自ら力を磨いた慣れ親しんだ浦添の地で、バックアップを誓う。
文=岡本朋祐 写真=BBM