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週刊ベースボール60周年記念企画

巨人・金田正一の苦悩/週べ回顧

 

 昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

堀内恒夫、颯爽デビュー


表紙は巨人柴田勲がダブルで


 今回は『1966年5月9日号』。定価は60円だ。

 4月21日の広島戦(後楽園)。巨人は先発の中村稔(右腕)が1回を投げた後、急きょ左腕の金田正一にスイッチ。中村は「背中に痛みが」と言ったが、藤田元司コーチは「予定どおり」とも。
 開幕から結果が出せない金田への川上哲治監督の“温情”が真相だったようだ(カープは、左の金田予想でスタメン起用した右打者の2人を、中村となってすぐ左に代えていた)。

 しかし金田はやはり打ち込まれ、敗戦投手に。試合後の金田はうなだれ、
「ワシはもうポンコツやな。くるもんが来たんや。ワシはいままで力で勝負してきた。運に頼ったことはない。ただ、いまは運がみんな逃げていくような気がするわ」
 と愚痴ったが、すぐ顔を上げる。
「ワシはこれまで何人もの選手を、この左腕で泣かせてきた。それがいまは反対になった。しかしやな、ワシは絶対に負けん。それが人生の修行いうもんやないか」
 翌日、金田は整形外科で診察を受け、左ヒジの軟骨ネズミを発見。医師は「全治未定」と診断した。
 それでも金田は、
「かえってサバサバしたよ。打たれたといってもワシは病人やったんや。病人が健康な奴に勝てるわけないやないか。ここまできたら焦らん。じっくり休養して完全にもとに戻してみせる」
 と強がった。

 金田離脱だけでなく、投手陣に不安があった中、チャンスをつかみつつあったのが、新人・堀内恒夫
 4月14日の中日戦(中日)で初先発を果たしたが、これは前日、天気予報から「あすは雨中止」と判断した川上監督が翌日先発予定の中村をリリーフで使ってしまったことから来ている。
 天気が回復し、試合が予定どおりとなった際、
「次の阪神戦に向け、ローテーションは崩したくない。ここは堀内でいこう」(川上監督)
 となったのだ。堀内は好投し、見事プロ初勝利を飾っている。

 一方、堀内以上の評価だった東京の新人・木樽正明はキャンプ中の投げ込みのしすぎで、ヒジ痛に。実戦でもどうもパッとしない。オープン戦の終盤、ほかの注目新人たちとテレビ出演した際、南海の野村克也への質問コーナーがあったらしいが、
 木樽の質問は、
「僕が思っていることと、コーチの言われることが食い違ったり、コーチにこうしろと言われたことを一生懸命やっているのにそれを分かってもらえないとき、どうすればいいのか」
 だった。
 少し早い5月病か。

 なお、この年の新人選択会議が8月と11月に分け、開催されることが決定的になった。進学か就職かで迷う高校生を早めに指名し、選択に時間的な余裕を与えてやろうというのが理由らしい。

 では、また月曜に。
 
<次回に続く>

写真=BBM
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