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プロ野球1980年代の名選手

ホーナー 来日4試合で6本塁打。“旋風”を巻き起こした現役バリバリのメジャー/プロ野球1980年代の名選手

 

1980年代。巨人戦テレビ中継が歴代最高を叩き出し、ライバルの阪神はフィーバーに沸き、一方のパ・リーグも西武を中心に新たな時代へと突入しつつあった。時代も昭和から平成へ。激動の時代でもあったが、底抜けに明るい時代でもあった。そんな華やかな10年間に活躍した名選手たちを振り返っていく。

「私はアベレージヒッター」


ヤクルト・ホーナー


 1985年から2年連続で三冠王に輝いた阪神のバースが、「なんで、あんな選手を連れてきたんだ」と真顔で言って、しばし絶句した。87年4月15日にヤクルトと正式に契約。その来日を知った巨人のクロマティはエクスポズ時代に対戦した経験があり、「もし全130試合に出ていたら50本塁打、打率.390、150打点はいくんじゃないか。もちろん三冠王サ」とコメントした。

 ヤクルトは最下位に沈むチームの浮上だけでなく、観客動員を見込んで5月5日、子どもの日の阪神戦(神宮)をデビュー戦と決定。その試合で、あいさつ代わりとばかりに第1号を放つと、翌6日の同カードでは3本塁打を放った。この試合で一塁を守っていたバースが試合後に発したのが冒頭のコメント。あの選手とは、ボブ・ホーナーのことだ。

 それまでも、実績のあるメジャー・リーガーが来日したことはあった。だが、メジャーのスター選手で、しかも全盛期に来日するのは異例。メジャー通算215本塁打とした86年オフにFA宣言も、年俸の高騰に悩む各球団のオーナーがFA選手への高額の提示をやめる申し合わせをしており、どの球団も100万ドルを超える条件を出さず、“浪人”寸前のタイミングで200万ドル(推定。日本円で約3億円)という金額を提示したヤクルトに「Yes」と答えるしかない状態だった。言い換えれば、このタイミングでなければ、その来日は実現しなかっただろう。

 日本での初出場の前日にはAP通信で全世界へ打電された。そして、2試合を終えた7日の朝には、日本でもスポーツ紙の一面が埋め尽くされることになる。ヤクルトの広告関係者も「この2日だけでCM値段に換算すれば軽く(年俸の)3億円は超える」と語り、ヤクルト本社の株は150円も上昇。グラウンドでも来日4試合で6本塁打など快進撃が続き、“ホーナー旋風”“ホーナー現象”などと騒がれた。

 907グラムほどのバットで軽々とスイングして、軽々とスタンドイン。だが、

「間違ってもらっては困る。私はホームランを狙って打席に立っているわけじゃない。むしろ打率だけを考えてバッターボックスに入っている。私はアベレージヒッター。本格的に野球を始めてから、ずっと同じ考えでやっている。バッティングはヒットが出なければ何も始まらない。アベレージが高ければ高いほど、ほかのもの(本塁打、打点)がついてくるというものだ」

 一方、本塁打のときも淡々と塁を周り、内野ゴロでも一塁へ全力疾走、併殺崩しのローリング・スライディングを見せ、一塁や三塁の守備も堅実。外国人選手の緩慢プレーに慣れた日本の野球ファンには新鮮だった。

「打つだけでなく、守備も走塁も、すべてを通して1試合をまっとうし、燃え尽きたいと思っている。日本の子どもたちにも言いたい。常に100パーセントの力を出せば、必ずいい結果に結びつく。それが私のすべてと言っていい」

 だが、それも長続きしなかった。

シーズン途中から“別人”に


 最終的には93試合で31本塁打。規定打席未満での30本塁打はプロ野球で初めてで、選球眼にも優れ、打率.327をマークした。勢いを失ったのはバットではなかった。関根潤三監督は「外国人が多い六本木ではなく、新宿に家を用意したことが最大の失敗。夫人が孤独に耐えかね、ホーナーも神経質になった」と悔やむ。

 7月11日の巨人戦(後楽園)で左の頸椎を捻挫して球宴を辞退、1カ月ほど離脱してからは、打席に立っても勝負を避けられ続けてきたこともあって、笑顔が消え、いつもイライラしていた。すぐ練習を休みたがるようにもなり、

「若手にチャンスをやってくれ」

 と最終打席に立たないことも。来日した当初と比べて、まるで別人のようになってしまう。

 結果、本塁打の量産ペースも落ちていき、日本のファンも徐々に冷めていった。オフにヤクルトは契約延長に向けて好条件を提示したが、拒否して退団、帰国して、その5分の1ほどでカージナルスと契約。その後は日本の野球を侮辱するような発言も伝えられ、ファンを失望させた。

 日本でプレーしていた期間は、1年にも満たない。まさに“旋風”だった。

写真=BBM

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