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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

“犠飛”に見るオリックス・吉田正尚の能力

 

初の侍ジャパンで2試合計5打数4安打6打点と好結果を残したオリックス吉田正尚


 打者としての資質の高さをうかがわせるのは、何も安打や本塁打ばかりではない――。

 侍ジャパン初招集となったオリックスの吉田正尚は、日本代表に選ばれることを知ると「選んでいただいたからには、しっかり結果を残したい」と、メキシコとの強化試合が行われる3月9、10日に合わせて状態を上げてきた。
 
 仕上がりぶりは“一発回答”。9日の第1戦は五番・DHで先発出場すると、初回に先制打をマーク。翌10日の第2戦は四番に座り、初回に右翼席へ弾丸ライナーの満塁弾とド派手な一発を放つなど、2試合計5打数4安打6打点と大暴れ。若手主体の侍ジャパンの中で存在感を示してみせた。
 
 着目すべきは“豪快弾”ばかりではない。第2戦の7回、一死一、三塁の場面での4打席目。左翼へ放った犠飛が吉田正の“能力の高さ”を象徴していた。

「もちろん、点は取りたいし、ホームランやヒットがベスト。でも、無理に打ちにいってゲッツーというのが最悪のケースです。得点が入らないどころか、攻撃も終わる。だから、意識したのはボールの下をとらえること。少し差し込まれてあっち(左翼)に飛びましたけど、最低限の仕事はできました」
 
 犠飛を放った7回は、初回に5得点を奪いながら、以降はゼロ行進の状況だった。野球は“流れのスポーツ”とも呼ばれるように、試合中盤の中押しは効果的になる。当然、本人もそれを承知のうえ。「だから、なおさらゲッツーは絶対にダメだった」と打席に立った中で、自らのバットで奪った1点だった。

 常に口にする「目指すのは打撃の幅を広げること」。だからこそ、シーズンの目標は「すべてのタイトル争いに加わること」ときっぱり。言うまでもないが、犠飛は打数に含まれず打率を下げることなく、打点は上乗せされる。“幅のある打撃”は“状況に応じた打撃”の助けとなり、結果、好成績に直結していく。

 あとは開幕に向けて再調整あるのみ。「(状態を)ガッと上げたので、これからどうしていくかですね」と話すも、チーム合流後初戦となった3月13日の西武とのオープン戦(シティ信金スタジアム)で2打数2安打1打点と心配は無用だろう。

 プロ4年目。今季はどんな成績を残すのか。さらに打撃の幅を広げていく先に、掲げる“全タイトル奪取”も現実も帯びてくる。

文=鶴田成秀 写真=毛受亮介
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