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球界デキゴトロジー/3月15日

“魂のエース”黒木知宏が涙の引退式(2008年3月15日)

 

良き兄貴分、小宮山悟[右]から花束が贈呈された


 プロ野球の歴史の中から、日付にこだわってその日に何があったのか紹介していく。今回は2008年3月15日だ。

 この日、ロッテ楽天のオープン戦が終了した千葉マリンスタジアムで、もうひとつの「試合」が始まろうとしていた。それが前年12月、13年間のプロ生活に別れを告げた元ロッテ・黒木知宏の引退セレモニーだった。

 オープン戦でのサヨナラ登板と言えば、相手は初回の先頭打者1人というのが相場だが、黒木はゲームセット後のグラウンドで両軍の3人のバッターと激突。“お約束”を排除した形での真剣勝負にこだわった。

 西岡剛らレギュラークラスの野手がそれぞれのポジションに散っていく。審判も公式戦同様4人が所定の位置に就いた。いざ、黒木が慣れ親しんだマウンドへ。

 最初のバッターは同期入団のサブロー。まず黒木は真っすぐで空振りを奪う。両雄の本気度はその後3球にわたって飛び出したファウルに集約されていた。右肩の故障に苦しみながら、現役にこだわり続けてきた黒木のハートに、サブローも全力でこたえていく。結局、フルカウントからの8球目、黒木がこの日の最速、138キロの真っすぐで空振り三振に打ち取った。

 続いては73年生まれの黒木とは“同級生”の関係にある楽天の礒部公一が打席へ。すると、レフトスタンドからは礒部のヒッティングマーチが。負けじとそれ以外の客席からは「ジョニー」コールが。実戦さながらの空気のなか、礒部は3球目を打ってサードゴロ。「黒木が本気で投げてくる気持ちを裏切りたくなかったので、三振だけは嫌だった」と礒部もまた黒木の思いを全力で受け止めた。

 そして、最後のバッターは福浦和也。もう二度と立つことのないマウンドで初球、フォークから入った黒木はフルカウントからの6球目、雄たけびを上げながら渾身の137キロ真っすぐで空振り三振。見事な“三者凡退”で、その投手人生に終止符を打った。

「皆さま、本当にありがとうございました。声援が僕に勇気と力を与えてくれました。マリンのマウンドが大好きでした。またいつの日か、皆さんと会えるのを信じています!」と黒木はファンに再会を約束した。

写真=BBM
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