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小園海斗を開幕一軍に勧める3つの理由/川口和久WEBコラム

 

カープが本気になった?


壁にぶつかるのもまた大事


 今年は高卒ルーキーが話題になることが多いけど、一番評判がいいのは、カープのドライチ、小園海斗。確かに見ていても攻守ともセンスがずば抜けている。オープン戦も途中まで打率4割以上と、しっかり結果を出していた。
 
 最初はチーム方針も、オープン戦で一軍を経験させて、開幕は二軍スタート、だったと思うけど、高信二ヘッドコーチが開幕一軍の可能性を口にした。
 カープは、コーチがチーム方針に反することを口にすることはない。
 緒方孝市監督も開幕一軍の可能性を模索し始めたのかな、と思ったら、案の定、三塁の守備練習を始めた。

 確かに、広島の若手育成には定評がある。二軍で徹底的に鍛えてから上げたほうが将来を考えればいい、という意見もあるかもしれないけど、俺は、開幕一軍でいいんじゃないかと思う。

 カープの高卒新人が開幕一軍スタートなら19年ぶりらしいが、当時は低迷期。4連覇を目指すなかで、18歳の新人が開幕一軍に入るかどうかが話題になるなんて、本当にすごいことだよね。

 では、俺が小園の開幕一軍を勧める3つの理由を。

 1つは、一軍の空気を吸うことで、自分が目指すものの確認ができる。通用しなきゃしないで、これから自分はここを目指していくんだ、というのがわかるしね。
 実際、俺がそうだった。
 1981年の入団で、開幕から一軍スタート。本心をいえば、二軍でスタートしたかった。体力も技術も未熟なのは分かっていたし、自分が一軍で通用するなんて、とても思えなかったから。
 でも、当時の古葉竹識監督がこう言った。
「川口、一軍という場所を知らないと、一軍に上がってこようと思わないだろ」。

 確かに一軍公式戦は、オープン戦とはまったく違った。特に開幕戦は、空気が重い。敵も味方もピリピリと緊張しまくっている。間違いなく、今以上。カープは特にだったかもしれないけど、殺伐とした戦場の雰囲気があった。
 開幕戦じゃないけど、実際、マウンドに立っても、オープン戦では隙だらけに見えたバッターが、すごい顔で向かってくる。粘るし、失投は見逃してくれない。打たれまくってしばらくしたら落とされたけど、あの数カ月の経験は、あとあとまで残る財産になった。古葉さんには感謝している。

 ショートには田中広輔がいるから一軍では控えが多くなるだろうし、チーム状況を考えても焦る必要はまったくないけど、将来を考えたら、小園にとって開幕一軍の空気を味わうだけでもプラスになるんじゃないかな。

 2つめの理由は、小園がいま結果を出しているから。
 もちろん、これから残りのオープン戦は本番使用で代打や途中出場が多くなる。ルーキーが1日1打席で結果を出せるほどプロは甘くないから、打率は当然落ちるだろう。
 ただ、オープン戦で一時は打率4割以上を残し、守備でもすごい、すごいという周りの評価は聞こえているはず。
 二軍に落とすなら一度、プロの壁を見た後のほうがいいと思うんだ。
 一軍を勝ち取るために自分には何が足りないのかを思い知らせてから落とし、それを必死に克服し、はい上がるのを待つ。
 そのほうが小園の未来につながる気がする。
  
 もう1つ、3つめの理由は俺のファン目線。
 あのセンスの塊みたいな選手が一軍で、どう挫折し、どう乗り越え、どう成長していくのかのドラマを見てみたい。

 みなさんはどう思う?

写真=BBM
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