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巨人・岡本和真選手のサード守備をどう評価している?【前編】/元中日・井端弘和に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は内野守備編。回答者は現役時代、7度、ゴールデン・グラブ賞に輝いた、元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.2019年シーズンから巨人の岡本和真選手がサードに挑戦しています。ブレークした18年は主にファーストでしたが、日米野球では5試合でサードを守っています。巨人、そして侍ジャパンで指導してきた井端弘和さんは、岡本選手の守備をどう評価していますか。(鹿児島県・43歳)



A.最初に教えたのは「人間の自然な動きのままに動け」です


元中日・井端弘和氏


 岡本選手の入団は2015年ですが、私にとっては巨人移籍2年目で現役最終年でした。1年目から一軍を経験していますから当時は同じ選手として、彼の守備を見ていたわけですが、一言でいえば“ヘタ”でした。リズムが悪く、捕球がボールに合っていない。捕球が合わないと、その後のスローイングにつなげるステップにも悪影響が出て、スローイングがあっちこっちに散らばり、安定感がないのは当然のことでした。

 守備というのは、どんな打球でも同じ動きをして、同じステップを切って、同じスローイングをすれば、みんなうまくは見えるものです。その中で精度を上げて、スピードを上げていって、上達をするのですが、岡本選手の場合、当時は手で転がしたようなイージーな打球でも、同じ動きができませんでした。

 足が止まったり、不規則なステップになってみたり。普通、人間は右足が出たら左足が出ます。右、左、右、左が自然なステップです。でも、岡本選手は右、左、右、右のような自然に反する動きが多かったです。本人は打球に合わせようと必死でしたが、実はまったく合っていなかったわけです。

 翌年からコーチとなるわけですが、最初に彼に対して言ったのは、「人間の自然な動きのままに動け」ということです。右が出たら左、左が出たら次は右だぞ、と。練習の中で繰り返し、自然な動きで打球に合わせられるようになったところでぶつかったのが、「合わなかったとき」の対処法です。

 どんなに注意をしていても、試合の中では打球に合わないことは出てきます。私だってそうでした。そのときにどう対処するのか。前に出ていって、合わない場合、岡本選手は足を止めてしまうことがほとんどでした。でも、前に出ていって合わなければ、下がってもいいわけです。このときにもしっかりと右、左、右、左を忘れないように、フットワークを使うところから身に付けさせました。動きがおかしいと、すぐに注意して指摘をしてあげる。当時はその繰り返しでしたね。

 また、体が硬く、腰を落としてもグラブが地面に着かないような状況でした。1試合、2試合ならばいいですが、143試合に出たら、腰やヒザなど、別のところに負担が来てしまいます。最低でも、グラブが着くくらいに柔軟性を身に付けようと。1年目はこの2つに重点を置いてスタートしました。

<「中編」に続く>

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。

写真=BBM
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