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2019センバツ

【センバツ】大敗も横浜・及川雅貴へのNPBスカウトの高評価は不変

 

不安的中のマウンド


横浜高の153キロ左腕・及川は明豊高との1回戦で敗退。力を発揮できなかった


 横浜高は今センバツの「関東・東京」における一般選考枠6校で、ラスト6校目で選出された。昨秋の関東大会準々決勝(対春日部共栄高)では7回コールド敗退と、微妙な立場であった。最終的には東京2位校(東海大菅生高)との比較検討により、滑り込みの形となったわけだが、その最大の決め手となったのが「大会屈指の及川(雅貴)投手のいる横浜高校」(選抜選考委員)であった。

 具体的に評価したのは、三振奪取力。最速153キロに、鋭く変化するスライダーのみで相手打者と真っ向勝負してきた。

「もともとはいろいろな球種があったが、使いこなせなかった。器用ではないので、2球種に絞って高めていこう、と」

 冬場には球質を含めて、次のステップへ進める段階となり、チェンジアップを習得。さらには「ムダな動きをなくす」と、フォーム改善にも取り組んできた。

 前日、星稜高の右腕・奥川恭伸が履正社高との1回戦で17奪三振完封(3対0)。大会注目投手の快投を受け、明豊高(大分)との1回戦の試合前には「意識するわけではないが、良い刺激にはなる。奥川君以上のピッチングをしようとは思わない。自分の投球ができればいい」と冷静に語っていた。

 奪三振についても「詰まらせたフライ、内野ゴロを目指している。その上で三振が取れればいい」と理想の投球スタイルを話していた。

 しかし、気になる言葉があった。

「ここまで順調には来ていますが、(フォームが)まだ完ぺき固まったわけではない。チェンジアップの完成度も5〜6割。高さが甘くなる。そこが怖いところ」

 不安が的中してしまった。1年夏、2年夏に続く3度目の甲子園は初めて背番号1を着けたマウンドだったが、味方が援護してくれた序盤の4点リードを守れず、3回表に連続四球からリズムを崩し、5失点でマウンドを譲っている(及川は右翼の守備へ)。エース降板が影響したのか、横浜高は相手に主導権を握られ、5対13の大敗を喫した。及川は8回途中、8点ビハインドの場面でマウンドに戻ったものの、3四死球と制球力に課題を残している。

課題を克服して夏にリベンジ


 試合前、選抜選出理由をどう受け止めたか聞くと「(昨秋の関東大会進出を決めた県大会準決勝の)慶應戦も自分が1失点しましたが、(9回裏に)逆転サヨナラ勝ち。チームで勝ち取ったもの。自分だとは思っていない」と、自身の評価には興味を示さなかった。この日もチームのために結果を残したかったが、試合後は「せっかくセンバツに選んでいただいたが、自分のプレーができなくて悔いが残る。課題を克服し夏に戻ってきたい」と語った。

 ネット裏では12球団のNPBスカウトが視察。この1試合で評価を決めるわけではない。この日は、コントロールこそ定まらなかったが、計4イニングで6奪三振をマークして、実力の高さを見せている。複数球団のスカウトに聞いても「素材が良いことは分かっている。夏まで引き続き見ていきたい」で意見は一致している。「全国制覇」と「プロ入り」という2つの目標を遂げるために横浜高へ進学した及川。甲子園で得た教訓を次に生かすチャンスはあと1回、残されている。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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