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2019センバツ

【センバツ】ドライチ右腕に“刺激”を受けた来秋ドラフト候補の明石商・中森俊介

 

経験したことのない球筋に衝撃


明石商高の2年生エース・中森は、1年夏から2季連続での甲子園出場。国士舘高との1回戦では1失点完投で初戦突破に貢献した


 ドラフト1位のボールは違う。昨年11月、教育実習で母校・明石商高へ来た松本航(日体大−西武)のブルペン投球を見た中森俊介は、経験したことのない球筋に衝撃を受けた。

「ボールの周りに、オーラがあるんです。マンガのように炎が出ている感じ? そうですね。威力が全然、違いました」

 松本と言えば、日体大時代から回転数の多いストレートで有名だ。昨夏の日米大学選手権、ハーレム・ベースボールウイークでも、外国人打者を相手に、球速表示以上に伸びるストレートで結果を残してきた。真っすぐの球質が優れているため、手元で変化するツーシームやカットボールもより効果的であったのだ。

 昨夏の甲子園。1年生で145キロを計測して注目を集めた中森は、松本のスタイルに着手。つまり、ストレートと同じ軌道ながら、本塁手前で動くボールにチャレンジしたのである。

 幼稚園から小学校6年時までピアノを習っていたことから、手先が器用。すぐに習得できるセンスがあり、そのまま継続する方法もあったがもう一度、冷静になって考えてみた。

 センバツ選考委員会で夏春連続出場が決まった直後、ブルペンで狭間善徳監督と話し合いの場を持った。ムービングボールは将来的な選択肢の一つとして残しておき、「まずは、ストレートを極めてから」と方針転換している。

 昨秋は近畿大会準優勝。中森は背番号1を背負ったが、イニング数は背番号10を着ける3年生右腕・宮口大輝のほうが多かった。

「低めに投げ切ることができず、ボールが高めに浮いて打たれることがあった。背番号1にふさわしい投球ができなかった。宮口さんはスライダーが良く、真っすぐとの組み立てもうまい。お手本としてきました。冬場はアウトコース低めの練習を繰り返してきました」

 最速146キロ。国士舘高との1回戦を控え、昨夏に続く甲子園では「背番号1にふさわしい投球をする」ことを大前提に、150キロ超えを宣言。大きく振りかぶるワインドアップからのフォームは松本先輩譲りのしなやかさがあり、ムダな力がどこにも入っていない。

 狭間監督は「上半身と下半身のかみ合わせ」と、独特な言い回しで、しっかり力がボールに伝わる体重移動を徹底的に指導している。

「低め」「低め」と連呼


 中森は9安打を浴びながらも、1失点完投で初戦突破に貢献した。目標の大台突破こそ果たせなかったが、自己最速タイ146キロの真っすぐを軸に、チェンジアップ、スプリットで的を絞らせない投球は2年生とは思えない完成度の高さだった。試合後は「甲子園で146キロが出たのは良かったです」と笑顔を見せたものの、全体的な総括としては厳しい自己評価となった。

「満足感? ありません。大事なところでボールが高めに行った。もっと低めに投げていきたい」と、昨秋から引き続いての反省を口に。何度も「低め」「低め」と連呼しているのが印象的だった。勝ってこそ、気を引き締める。それが、次につながる。

 先輩・松本からの言葉が励みになっている。

「このまま努力していけば、良いレベルで野球ができるのでは、と。尊敬する選手の一人で、プロ野球が身近に感じました」

 気は早いが、2020年のドラフトを騒がせる候補の一人である間違いない逸材と言える。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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