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2019センバツ

【センバツ】桐蔭学園・森敬斗に詰まっているプロで成功する4つの魅力

 

菊池涼介か、高橋由伸か


桐蔭学園高・森は啓新高との1回戦で3安打1打点。チームは初戦で敗退し、主将としてすべての責任を背負い込んだが、夏に雪辱するチャンスは残されている


 広島菊池涼介二世になれる――。「将来性」をその目で見極める担当スカウトの直感は大切だ。16年ぶりに桐蔭学園高をセンバツ甲子園出場に導いた、三番・遊撃手で主将を務める森敬斗の数年後を描いた青写真である。

 ドラフト指名を受ける選手は、平均点ではダメ。総合力に加え、何か突出した部分があったほうが長くプレーできる。冒頭のスカウトによれば森には、プロで成功する3つの魅力が詰まっているという。

 まずは、脚力と強肩。仮に遊撃手から転向した場合も、二塁手には二遊間のゴロ処理や中継プレーなど、遠投力が必要である。50メートル走5.8秒の俊足と遠投120メートルの身体能力はセカンドでこそ生きてくると、前出のスカウトは興味を示したのだ。

 打撃も非凡だ。桐蔭学園高のOBである「高橋由伸二世」との声も出ているが、大きく右足を上げる打撃フォームはそっくり。構えだけでなく、大先輩と共通しているのは、内角球に対する天才的なバットのさばきである。

 最短距離でコンパクトに振り抜いた右翼線への森の打球は、ファウルゾーンへ切れず、ラインドライブもせず、そのままフェンスへ到達することも。現役時代に左打者だった前出のスカウトに専門的な部分にまで踏み込んでもらうと、バットの出し方が秀逸だという。これは指導して習得できるレベルではなく、生まれ持った感性に尽きる。

 そして、3つ目。プロ野球はファンに夢を与える仕事だから、スター性が重要だ。端正なマスクは、昨秋の段階でメディアの間でも「イケメン」として話題に。肌のケアに気を配っており、甲子園に入ってからも洗顔後の保湿、乳液などを欠かさず行う几帳面な一面もある。

 一冬を越えて体重は6キロ増の71キロ。パワーアップして臨んだ啓新高とのセンバツ1回戦では、4打数3安打1打点と躍動したものの、チームは3対5で初戦敗退を喫している。

大学進学志向が強いが……


 この一戦を経て、新たに4つ目の魅力を感じた。

「自分が主役になろうとは思わず、つなぎを意識したい」

 主将として語った試合前のコメントだ。過去に甲子園優勝経験のある桐蔭学園も16年ぶりのセンバツ出場。

「グラウンドに入ったときから浮ついていて、自分を見失っている選手がいた。甲子園は誰でも緊張する。自分の声かけで、周りも変わってくる。主将としての責任を果たせなかった」

 チームリーダーが敗戦のすべてを背負った。

 個人的な結果を見れば、3安打はすべて逆方向と、大きな成果を得たようにも見受けられる。相手校には森が「内角が得意」というデータは当然あり、外角を中心に攻めてきた。そのボールを逆らわらずにスイングし、ヒットにしたのである。「冬場にやってきたことができて良かった」と話したのも束の間「それで良かったと思ってしまえば、そこで成長は止まる。2打席目を忘れずに練習する」と引き締まった表情で話した。

 その第2打席。3点を追う2回裏に2点を返してなお、二死満塁で森に回ってきたが、三球勝負で空振り三振に仕留められている。「初球、2球目と気持ちに余裕がなかった。自分も知らぬ間に焦っていた」と、平常心で戦う難しさを明かした。片桐健一監督は昨秋と比較して「彼の意地。一回り大きくなったのは感じる。ただ、それを勝利に結びつけられるか」と、主将・森への期待が大きいからこそ、注文することも忘れなかった。

 NPB12球団が集結したネット裏のスカウトは対照的に、チームの「結果」よりも個人の「内容」を重視する。森にとっては猛アピールの場となったが、周囲の話を総合すると大学進学志向が強いと言われる。森は同校OBのロッテ鈴木大地を尊敬しており、リーダーとしての資質は十分。森のプレーに興味を示したスカウトの夢物語も、いずれは現実のものとなるような気がしてならない。

文=岡本朋祐 写真=宮原和也
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