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星稜高・奥川恭伸の取材対応で思い出した92年夏、先輩・松井秀喜の姿

 

星稜高・奥川は履正社高との1回戦で151キロをマークし(写真)、ポテンシャルの高さを披露。実力に加えて、人間性も優れている


 負けから学ぶもの。17歳の高校生とは思えない冷静な分析力に、ただ感心するばかりだった。センバツ2回戦で習志野高に1対3で惜敗した星稜高・奥川恭伸(3年)の取材対応である。

 試合中、習志野高の二塁走者によるサイン伝達の疑い(星稜高サイドから審判団に確認を求めるも、結果的にそういった行為はなかったと判断)があり、試合後の甲子園のインタビュー通路は騒然としていた。しかしながら、3失点を喫したエースは、落ち着いた口調で自身の力不足を認める発言に終始した。

 奥川は2年春から3季連続での甲子園出場。昨年9月には2年生で唯一、高校日本代表に選出され、U-18アジア選手権(宮崎)でプレー。この4月に新学年を迎える3年生世代で、最も多くの場数を踏んでいると言っていい。

 今大会No.1投手。ドラフト1位候補。自ら置かれた立場を十分理解してか、繰り返しにはなるが、すべての質問に感情を表に出すことなく「大人の対応」をしてきたのだ。

 最も印象に残ったのは「美爆音」の感想だ。名門・習志野高吹奏楽部による約170人の大演奏。この日は、球場の近隣住民などから音量についての連絡を受けて、同応援団は抑制。奥川はこうしたブラバン応援の中で力投を続けていたのだ。

「そこに対する心の揺らぎはなかったです。ただ、あの音の中で、声が通らなかったり、連係ミス……。これが、春で良かった。夏までにはどんな展開になっても、自分たちの形で戦えるようにしたい」

 淡々と語り、感情を表に出さないこれらの談話を受け、1992年夏を思い出した。

 松井5敬遠――。明徳義塾高が勝つために選択した戦術である。星稜高のスラッガー・松井秀喜は5打席で1度もバットを振ることなく歩かされた。試合後、敗戦した結果を素直に受け止め、場内からは罵声も飛んだ自らの事実については、多くを語ろうとしなかった。

 27年前、甲子園のインタビュー通路での先輩の真摯な応対と、今回の後輩・奥川の姿に重なる部分があった。17歳の高校生ながら、注目選手としての振る舞い。負けから多くの財産を得て、最後の夏へ向けたエレルギーとしていく。奥川には、それだけの優れた学習能力がある。このままでは絶対、終わらない。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎

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