昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 巨人・長嶋茂雄、絶好調
今回は『1966年6月13日号』。定価は60円だ。
30歳、父親にもなった巨人・
長嶋茂雄が5月30日現在、打率.366で打率リーグトップに立っていた。
「体調といい、カンといい、すべてうまく回転している。いまは少しも疲れを感じないし、それだけ快調なんだろうね」
余裕たっぷり。内角高めのクソボールを大根斬りでヒットにしたり、積極打法が光っていた。
一方、左ヒジの故障に苦しむ巨人・
金田正一が「ソ連製の秘薬」でカムバックを図っているという、いかにも胡散臭い話もあった。
これは妊婦の胎盤から採取したエキスを脇腹から注射するというもの。しかも全身麻酔で注入部分を切開してから注射するらしい。
ソ連の高名な医師が東ドイツから技術導入してつくり上げたもので、値段がつけられぬほど高価。さすがの金田でも手が出ず、スポンサーだった製薬会社が手配してくれたものだという。
同じ民族、同じ血液型、しかも初産か二度目くらいの健康な妊婦から取らなくてはならず、胎盤探しはかなり時間がかかった。
そして、ほんとかウソか、これでヒジの痛みは消えたらしい。
実際、5月23日には多摩川のブルペンで200球の投げ込み、このときビデオカメラを持ち込み、10球投げるごとにフォームの確認をしていた。
藤田元司コーチも
「この調子ならあと1週間でベンチ入りできるでしょう」
と話していた。
巨人では二軍落ちしていた新人・
堀内恒夫が絶好調。イースタンの東映戦で14奪三振の好投を見せた。
「球が変わらないでコントロールがついたから。前よりずいぶんよくなったと思うんです。早く一軍から声がかからないかと大張り切りで電話を待っているんですが」
と堀内。表情が明るいので尋ねると、10勝すると、金田から26万円のローレックスの時計をもらう約束があったらしい。
2年連続首位打者を狙う
中日の
江藤慎一が「江藤自動車株式会社」を設立、社長となった。自動車修理工場であるが、将来的にはモーテルにする計画もあったようだ。
「ワシはいつまでも野球ができるとは思わない。だから野球選手をやめたときに、すぐメシが食えないようじゃいかん。そう考えてこの会社を作った」
では、また月曜に。
<次回に続く>