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菊池雄星、4回3分の2の屈辱/川口和久WEBコラム

 

自分自身で自分の居場所を


3月21日の試合は4回3分の2で自責点1、失点2




 3月21日、東京ドームでのアスレチックス─マリナーズの試合は、イチローのラストゲームになった。平成を象徴する大スターが平成とともに去る。試合後にサプライズのように会見を行ったのもまた、イチローらしい去り際と言える。

 この試合は、西武からポスティングシステムでマリナーズに移籍した菊池雄星のメジャー公式戦デビュー戦でもあった。
 展開としては4回までは1安打だったが、5回は二死二塁からタイムリーを打たれ、チームがまだリードしていながら降板となった。

 内容は決してよくなかったと思う。変化球の制球が甘く、ストレートが引っかかっていた。球数も91球となっていたしね。
技術的な問題というより、メンタルの問題かなと思った。自身のメジャーデビュー、それも日本でだったし、イチローという大先輩の引退試合でもある。なんとか自分の手で勝ちゲームにしたい、という思いが重圧、緊張になったように見えた。

 公式戦の引退試合は、味方にとっても重圧がある。
 俺も衣笠祥雄さんの引退試合に先発したことがある。お世話になった大先輩なので、感傷的にはなったけど、何とか試合を壊さず、勝ち試合にしなきゃとは思ったんだが、残念ながらKOされました……。
 もちろん、キヌさは何も言わないけど、ものすごく申し訳ない気持ちになったのを覚えている。
 雄星もあの重圧の中、よく投げたと言えるのかもしれない。

 ただ、俺は、あの交代が嫌だった。
 だって、4回3分の2でしょう。先発投手にとって勝利投手の権利をつかむまであと一人。俺自身がそうだったけど、すごく悔しいし、屈辱でもある。
 チームには悪いが、俺はそこで代えられるなら負けたほうがマシと思っていた。

 マリナーズの監督がどう考えていたのかは分からないが、おそらくは、単純に球数や雄星が2巡目に連打を浴びやすく、そうなると一気に崩れるというデータがあったんじゃないかな。メジャーなら、これも当たり前なのかもしれない。

 でも、ここは日本、しかもデビュー戦だよ。マリナーズとしてイチローのラストを飾りたいと思っていたならなお、何とか同じ日本人選手の菊池に勝ち星をつける采配をしてほしかった。
というか、あと一人は絶対に投げさせてほしかった。
 もし菊池に悔しさを植え付け、その後につなげさせたい、という思いからの非情采配ならまだいいけど、単純にデータから、という雰囲気もまた嫌だった。

 菊池は「これもメジャー。慣れていかなくては」と話していたらしいが、俺は慣れる必要はないと思う。
むしろ、これからは絶対、こんな場面で代えられないようにと考えてほしい。精神論じゃないよ。そのためには球数が増えないようにしなきゃいけないし、連打を浴びないようにもしなきゃいけない。

 雄星には、イチローがそうだったように「メジャーがこうだから」ではなく、自分の居場所を自分自身でしっかりつくってほしいと思う。

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