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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

最下位に沈む広島の復活のカギは?

 

得点力低下が招いた苦戦


四番の鈴木誠也は絶好調。それを生かすも殺すも五番打者次第……


 昨年までのセ・リーグ王者の広島が苦しんでいる。開幕から4月8日まで、いずれも1勝2敗ではあるが、3カード連続の負け越し。これは広島にとっては2010年以来、9年ぶりで、緒方監督となってからはもちろん初めてのことだ。通算3勝6敗で、最下位に沈んでいる。

 投打のバランスを見てみると、ここまでの総得点は31(1試合平均3.44)、総失点は38(1試合平均4.22)なので、攻守のどちらかが大きく崩れている、とまでは言えないが、1試合平均、5.03得点、4.56失点だった昨年と比べると、ディフェンスのほうはまあこれぐらいか……、という感じでもあり、昨年との比較では、得点力の低下が苦戦を招いている部分が少なくない、と分析できる。

 目立つのは、昨年猛威を振るった「恐怖の下位打線」が、いまひとつ機能していないところだ。丸佳浩(現巨人)が抜けた今季のカープは、三番打者がなかなか決まらず、どうなるのかが心配されていたが、この部分は開幕3試合目から入った野間峻祥が高い出塁率をキープして、いまのところ問題なくこなしており、四番の鈴木誠也が打率.357、5本塁打、12打点と絶好調で、四番までの上位打線はここまでは十分機能しているといっていい(一番の田中広輔の当たりがちょっと止まってきたのは気にはなるが……)。

 ただ、五番以下の打順は、六番打者が打率.313という数字を残しているのが目立つのみで、五番打者はここまで.188とまったく低調、七番打者は.233、八番打者は.167とこちらも低打率だ。

 4月7日の阪神戦(マツダ広島)でも、初回の無死一、二塁から、遊ゴロの野間が俊足で併殺をまぬがれ一、三塁に走者を残しながら、四番の鈴木はやはりまともに勝負してもらえずに四球で満塁。続く五番の松山竜平が一ゴロ併殺に倒れ、ゲームの主導権を取りそこなうという場面があった。もちろんこの辺りは併殺打もヒットも紙一重という部分があり、その打席だけを取り出してどうこうとは言えないが、松山にチャンスでのさらなる集中力を求める発言も、首脳陣からはあったようだ。

チームに焦りが出る前に


 今のところ、下位打線でまずまず及第点といえるのは安部友裕のみという状況だが、ただ、今後の復活の可能性については、そう悲観することもないような気もする。安部以外の、「恐怖の下位打線」を形成すべきメンバーを見渡してみると、松山はもちろん、オープン戦で絶好調だった會澤翼、天才的バットコントロールを持つ西川龍馬、実績十分の長野久義、一発長打のあるバティスタと、それぞれに高い打撃技術を持ち、実際に数字を残したこともある選手ばかりなのだ。それだけに、ちょっとしたズレを調整すれば、状態を上げてくることは決して不可能ではないと思うのだが……。

 4月7日のゲームでも、松山は第2打席で、前の打席で打ち取られたチェンジアップを二塁打、西川は2安打、會澤にもヒットが出て、それぞれにきっかけは得たように見えるし、長野については打撃の状態というより、体の状態が上がってくれば、というところだろう。

 まだまだ、「去年までの王者が変調!?」と騒ぐような場面ではないと思うが、怖いのはうまく勝利が得られないことによる焦り。近年はペナントレース展開としても、広島は独走の優勝が続き、競り合ったり、あるいは負けが込んで焦ったりという精神状態は、今のナインはそれほど経験していないことも確か。チームに焦りが出てきてしまう前に、そして、上位打線の好調が続いている間に、各打者が状態を調整して「恐怖の下位打線」を復活させることができるか。まずはここに、4連覇への道はかかっているといっていい。

 今季は、昨年までチームの精神的支柱となってくれていた新井貴浩氏もベンチにいないが、そんな中でも、チームに焦りを蔓延させずに立て直すことができるか。思ったより早く、その局面が来てしまった感もあるが、ナインが本物の強さを培ってこられたかどうかが、今、試されているともいえよう。

文=藤本泰祐 写真=BBM
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