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【MLB】65歳、希代の戦略家ジョー・マドン監督は生き残れるか?

 

試合前の練習で選手に話しかけるマドン監督。今季優勝を期待されて指揮を執るが、データ時代の野球で名将か生き残れるか、注目のシーズンとなる


 カブスのジョー・マドン監督は2016年、チームを108年ぶりの世界一に導きシカゴの英雄になった。もともと常識にとらわれない多彩な戦術を駆使し、最優秀監督3度、MLBを代表する名将である。

 しかし17、18年はプレーオフで敗退、19年は5年契約の最終年だが、昨オフ、セオ・エプスタイン編成本部長は、契約延長の話し合いは凍結と発言しシカゴの記者たちを驚かせた。「うちには才能ある選手が十分にいる。このメンバーの力を引き出すのにやるべきことは沢山ある。われわれはそこに焦点を絞っている」と説明した。

 18年のオフ、FA補強にお金を使い過ぎたため、昨オフは資金が限られ、大型投資はコール・ハメルズのオプション(2000万ドル)行使のみ。今季はほぼ同じ戦力だが、それで十分との判断。マドン監督がチームを勝たせられれば契約延長、ダメなら解雇の方向と見られている。

 近年、メジャーでは監督に求められる資質が大きく様変わりしている。データを理解し、フロントと選手の間に入って、うまくコミュニケーションを取れる人材。中間管理職のようなもので、年齢的にも40代くらいが多い。大監督として君臨してきた60歳のマイク・ソーシア(エンゼルス)は引退し、63歳のブルース・ボウチー(ジャイアンツ)も今季限りを表明した。

 そんな中65歳のマドンも英語で言う「HOT SEAT(厳しい立場)」に座らされている。実を言うと、マドン監督は昨季、選手の自主性を尊重し、指導もベテランコーチたちに任せていた。しかしオフにエプスタインは、ベンチコーチ、投手コーチ、打撃コーチを総入れ替え、一気に若手に代えた。

 マドンは彼らの経験不足を補うために、今年はよりフィールドに出て、直接指導にも当たる。もともと監督になる前はマイナー監督、コーチ、メジャーのベンチコーチが長く、指導経験は豊富だ。プラス、フロントが要求するのは「SENSE OF URGENCY(切迫感)」である。

 昨年のチームは「長いシーズンだからリラックスしていこう。うちには力があるから」の姿勢だったが、いくつか勝てる試合を落とし、結果的にブリュワーズの追い上げを許した。エプスタインは「わが地区(ナ・リーグ中地区の競争はより厳しくなっている。すべての試合が重要だし、今やらないと、という気持ちで戦わないと」と力を込める。

 彼はオフに、ジョン・レスター、クリス・ブライアント、アンソニー・リゾら主力選手とも直接話し合い、チーム内のルールを多少厳しくすることや、全体練習を増やすことなどについて意見を聞いたそうだ。昨季までは、フロントのトップが遠征に同行することは少なかったが、今季はそれも変える。より現場とコミュニケーションを取るためだが、言い方を変えればより現場に口出しをしてくるのである。

 マドン監督はレイズ時代から、常識にとらわれず、チームづくりでも戦術でも独自のアイデアで成功してきた。近年、最も注目度の高い指揮官の一人だった。しかし今、MLBで求められる監督像が変わる中で、生き残れるのか?フロントの求める結果を出せるのか? 注目のシーズンになっている。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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