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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

佐々木朗希が甲子園に出場するためのキーマンは?

 

大船渡高・佐々木とバッテリーを組む及川。2人の呼吸は抜群である


 高校野球界は大船渡高・佐々木朗希(3年)が話題を独占している。高校日本代表候補として参加した「国際大会対策研修合宿」で、自己最速を6キロ更新する163キロを計測。2012年夏、花巻東高3年生だった大谷翔平(現エンゼルス)が計測した160キロを、春の時点で超えたのだから衝撃的だ。

 佐々木のボールを受けた捕手は、あまりの衝撃により、左手に軽い裂傷を負ったという。

 大船渡高が岩手代表として35年ぶりとなる夏の甲子園出場をつかむには、佐々木の「個人技」だけでは限界がある。つまり、チームメートのサポートが必要であり、2人のキーマンの活躍が浮沈のカギを握っている。

 アベレージ150キロ超のストレートを捕球するのは正捕手・及川恵介(3年)である。昨秋の時点で、野球部が特注で準備したといわれる、通常よりも硬めのミットを使用。それでも、試合を重ねるごとに捕球音が鈍くなっていったというから、佐々木の球威の半端なさが伝わってくる。

 バッテリー2人の呼吸は抜群。佐々木と及川は高田小時代からの幼なじみである。2011年の東日本大震災で被災した佐々木は大船渡へ移住したため、一度は離ればなれとなった。だが、大船渡一中3年時に選抜チーム「オール気仙」(KWBボール)で、高田一中でプレーしていた及川と再会(東北大会準優勝)。高校進学に際しては及川が「バッテリーを組みたい」と佐々木を勧誘し、オール気仙のメンバーの多くが大船渡高に進学している。彼らの根底には地元の仲間たちで甲子園出場を目指すという、最大の目的があった。

大船渡高打線のキーマンは右の大砲・木下で、逆方向へスタンドインできるパワーがある


 打線で佐々木を援護する木下大洋は、同チームで主将を務めていた。大船渡高でも不動のクリーンアップ。昨秋、盛岡大付高との県大会準決勝では右越えソロ。センバツに出場する左腕・阿部秀俊から放った逆方向への当たりから、高い将来性を感じる右のスラッガーだ。

 木下の父・清吾さんは「大船渡旋風」を巻き起こした1984年春のセンバツで4強へ進出した際の「一番・三塁手」(同夏も甲子園出場)。法大でもプレーした父親からのDNAをしっかり受け継いでおり、全国レベルの打者と言える。打撃センスも非凡である佐々木は四番で起用されることが予想され、仮に四球で歩かされた場合には、木下がポイントゲッターとなる。

 キーマンとして2人の名前を挙げたものの、どこにも負けない「チームワーク」が最大の武器としてある。昨夏は右腕・吉田輝星日本ハム)を擁する金足農高(秋田)が甲子園準優勝を遂げたが、大船渡高にもエースを盛り上げていこうとするムードがある。岩手の勢力図は盛岡大付高、花巻東高、専大北上高、一関学院高、盛岡中央高ら強豪私学が軸で、1994年夏の盛岡四高を最後に、公立勢の甲子園出場はない。頼もしき仲間に囲まれる163キロ右腕。大船渡高は「結束力」で、25年ぶりの壁へと挑んでいく。

文=岡本朋祐 写真=桜井ひとし
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