昨年までのセ・リーグ王者の
広島が、ようやく調子を上げてきた。開幕から5カード連続負け越し、6カード連続で勝ち越しなし、と苦しんでいたが、7カード目に本拠地のマツダ広島で
DeNAをスイープし、4月21日には最下位も脱出した。
そのきっかけとなったのは、何と言っても4月17日の
巨人戦(熊本)だ。2点先制されたが同点に追いつき、なお8回裏に2点勝ち越されたが9回表に3点を挙げて逆転勝ちした。今季は、そこまでに、初回に1点先制されたのを逆転して勝ったゲームが1試合あったが、本格的な? 逆転勝ちはこれが初めてといってもいい。これをきっかけに、攻撃陣には昨年までのイメージが戻ってきたようだ。
そのイメージとは、「つないでつないでビッグイニング」という感覚、とでもいえばいいだろうか。チームの調子が悪い間は、チャンスで打席に入っても、打者は「ここで俺が決めなきゃ」という意識が先に立つのか、浅いカウントで難しい球を打ちに行って凡退、というケースが散見された。ところが17日の逆転勝ち以降は、「後ろにつなげば何とかしてくれる」という、昨年までの感覚がよみがえったかのようで、19日には延長10回に四球で走者をためた満塁から
會澤翼がサヨナラ打、20日には4回に5安打3四球を集中して6点、21日には初回に5安打2四球で4点、という具合だ。調子の出ていなかった
田中広輔、
バティスタ、
西川龍馬、會澤らが調子を上げ、
菊池涼介が得点圏打率.538(4月22日現在)と、恐るべき勝負強さを見せていることで、いよいよ打線がつながり出した。もう、これまでのように焦りや力みが前面に出ることはないだろう。
さて、そうしてとりあえずチームに訪れた序盤戦の危機は脱したカープだが、ここからさらに上、勝率5割を超えて優勝争いに参入していくためには、何が必要になってくるだろうか。
打線のほうでは、あとは20日のゲームで頭部死球を受け、登録抹消となっている
松山竜平と、例年スロースターターの傾向はあるが、調子の上がってこない長野久義がどの段階で調子を上げてこられるか、だろう。この辺のメンバーがいないとやはり、五、六番がやや弱く、四番の
鈴木誠也が勝負を避けられるケースが増える。松山、長野の調子が上がってこなければ、西川、バティスタがどこまで頑張っていけるか、ということになるか。
さらに言えば、投手陣は、打線に比べて、まだ形が見えてきていない感じが強い。現状、ある程度クオリティースタートが計算できるのは、
大瀬良大地、
床田寛樹、
野村祐輔の3人。ジョンソンは何とか21日に今季初勝利を挙げたが、それを数えても4人。ゴールデンウィークには12連戦も待っており、ここをどう乗り切っていくか。一時中継ぎ待機に回った
九里亜蓮、今季は先発も目指す
アドゥワ誠あたりが先発ローテーションに入ってくるとみるが、打線の援護は必須だろう。さらに、勝利の方程式で8回を担う
フランスアが、4月22日現在、防御率7.88と安定せず、ここが状態をどこまで上げられるかも、連戦の中で打ち合いをものにするためには大きな要素になってこよう。
幸い、まだ首位チームとの差は4.5(4月22日現在)と、手が届かないところまで行かれてはいない。まずは、先発投手の頭数に不安が残る中で、ゴールデンウィークの12連戦でどれだけ勝利を挙げられるか。広島にとって、鯉のぼりの季節は、4連覇へ向けた大きな勝負どころになりそうだ。
文=藤本泰祐 写真=BBM