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プロ野球1980年代の名選手

斎藤雅樹 プロ野球新11連続完投勝利で平成最初の20勝/プロ野球1980年代の名選手

 

1980年代。巨人戦テレビ中継が歴代最高を叩き出し、ライバルの阪神はフィーバーに沸き、一方のパ・リーグも西武を中心に新たな時代へと突入しつつあった。時代も昭和から平成へ。激動の時代でもあったが、底抜けに明るい時代でもあった。そんな華やかな10年間に活躍した名選手たちを振り返っていく。

時代が平成となり……


巨人・斎藤雅樹


 長く続いた昭和から平成となった1989年。巨人の先発に定着したばかりの右腕が、負けたら次の先発はないかもしれない、という危機感の中、怒涛の快進撃を見せる。5月10日の大洋戦(横浜)で4点リードの8回裏に1点差まで詰め寄られながらも完投勝利を収めて、以降11試合連続完投勝利。現在もプロ野球記録として残る快挙だ。この間、1398球の熱投。90年代に“最強のエース”と呼ばれた斎藤雅樹の、80年代の最後に訪れた大ブレークだった。

 埼玉の市川口高では本格派右腕として評価が高かったが、甲子園出場はなし。83年秋のドラフトで巨人が1位で指名したのは、早実高のエースで、アイドル的な人気を誇った荒木大輔だった。だが、荒木の交渉権を獲得したのはヤクルト。その外れ1位で巨人に指名された。

「授業中で知らなかった。どこの指名でもプロに行くつもりでしたが、ほかに熱心な球団があったので、そこだと思っていました。休み時間に部長が入ってきて、巨人の1位と言われて。みんな大騒ぎでしたね」

 ただ、巨人が指名した理由は、投手としての素質だけではなく、野手としても通用する高い身体能力にもあった。プロ入り早々、野手転向の恐怖との戦いが始まる。シーズン開幕後、イースタンでも結果が出ない日々が続き、野手転向が現実味を帯びつつあったとき、藤田元司監督がファームの視察に訪れたことがターニングポイントとなった。かつて“悲運のエース”と呼ばれた藤田監督は、「腰の回転が合っているから」と、サイドスローへの転向を指示する。

「そこから3カ月しごかれ、9月に地元の登板で結果を出したことで自信をつけました」

 実際、オーバースロー時代とは、まるで別人のようだった。直球のキレは良くなり、制球力も向上。外角へ投げたカーブは左打者にぶつかりそうになるくらい大きく曲がった。このオフに藤田監督が退任したことを考えれば、まさに運命の分かれ目だったといえるだろう。

 翌84年に一軍デビュー。リリーフを中心に17試合で無傷の4勝、終盤には先発初勝利も挙げた。続く85年はリーグ最多の4完封を含む12勝7セーブ、リーグ3位の防御率2.96。先発、リリーフに41試合のフル回転だったが、

「投げるのが楽しくてたまらなかった」

 と振り返る。だが、その翌86年は7勝1セーブにとどまると、続く87年はゼロ勝に終わり、その翌88年は6勝1セーブ。ヒジ痛もあって伸び悩んだ。だが、その88年オフに藤田監督が復帰、先発完投を重視する方針を掲げると、ふたたび運命が大きく動き始める。

 開幕第2戦となった4月9日のヤクルト戦(東京ドーム)に先発も、8回3失点で勝ち負けつかず。20日の中日戦(ナゴヤ)に完投してシーズン初勝利、30日の中日戦(東京ドーム)ではシーズン初完封。だが、5月7日の広島戦(広島市民)では初回に3失点を許して、マウンドを降りた。この敗戦が起爆剤となる。

そして90年代“最強のエース”に


 背水の陣で始まった89年の11連続完投勝利。5月30日の大洋戦(新潟)は完封、続く6月4日の阪神戦(東京ドーム)は無四球完封、10日のヤクルト戦(神宮)では3連続完封で6連続完投に。続く16日の中日戦(東京ドーム)では延長10回、151球を投げ抜いて、サヨナラ勝ちを呼び込んだ。

 7月1日のヤクルト戦(神宮)ではスタルヒンの球団記録に並ぶ9連続、8日の大洋戦(横浜)では鈴木啓示(近鉄)のプロ野球記録に並ぶ10連続。15日のヤクルト戦(東京ドーム)でのプロ野球新記録は完封で飾った。最終的には“平成最初”の20勝、防御率1.62で最多勝、最優秀防御率の投手2冠で沢村賞に。卓越したスタミナと、ゆったりしたサイドスローからの浮かび上がるようなストレート、滑るように変化するカーブ、そしてシンカー。両サイドに投げ分けたストレートはナチュラルにスライドした。この、いまで言うカットボールが生命線だった。

 開幕投手を任された翌90年も2年連続20勝で投手2冠、初のMVPにも輝いた。90年代の通算126勝は最多記録。名実ともに90年代“最強のエース”となっていった。

写真=BBM

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週刊ベースボール編集部

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