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記録の周辺

急増するホームラン、だが、それは必ずしも打高投低の証明ではない?/記録の周辺

 

フライボール革命の浸透


今季、アベレージ、長打力ともレベルアップしている巨人坂本勇人



 開幕直後の取材だった。

 野球評論家の大島康徳氏が、「結構、今の時代、投手は楽かもしれないですよ」と言った。
 打高投低が盛んに言われる今シーズンについて尋ねたときだ。

 今年球界での明らかな傾向はホームラン増だ。それは間違いない。飛ぶボール、狭くなった球場、投手の情報の精密な解析、フライボール革命とも言われ、下位打線まですべてがホームランを狙うようなフルスイング……。

 端から見れば、打者有利、それこそホームラン競争一直線のような流れが進んでいるが、大島氏は「打ちたい、打ちたいというバッターは、どうしてもボール球に手を出してくる。あれだけ振ってくれば、内外を広く使え、特に外の出し入れができる投手なら、むしろ投げやすいでしょう」と話していた。
 
 データは大島氏の言葉を裏づけているようにも思う。今回は、セをサンプルに見てみよう。

 まだまだ、全試合の5分の1を超えた程度のデータに過ぎず、かつパでは若干ではあるが、違う傾向があることは最初に書いておく。

 まず、5月2日現在の各球団のゲーム数で、2018年同時点の本塁打数、打率と比較する。

 現時点セ1位の巨人は、28試合を消化しているが、18年の同時点と比較すると(他球団も同様)、ホームランが21本から40本とほぼ倍増し、打率は.282から.268へ落ちている。

 2位のヤクルトは30試合時点で28本から39本とこちらも激増。打率は.253から.252とほぼ同じペースだ。
 3位の阪神は、30試合で17本から22本、打率は.235から.241といずれもアップしている。本塁打は新人・近本光司の4本分と言えるかもしれない。

 上昇が一番顕著なのは4位の中日だ。28試合時点で15本塁打から21本塁打、打率.245から270までアップしている。

 思わぬ低迷が続き、5位に甘んじている広島は、29試合時点で27本塁打から25本塁打とあまり変わらないが、打率.260から.229。打線の脅威はかなり低くなっている。

 最下位のDeNAは29試合で27本塁打から35本塁打と、こちらは激増したが、打率は.235から237とあまり変わっていない。本塁打数に関しては、前年5月6日初出場のソトがすでに11本塁打している影響が大きい。

 全般の傾向として、打率においては18年と比べ、大きな差はない。3割打者は、これは5月2日時点で切ったものだが、いずれも11人。ホームラン数のみ急増していると言っていいだろう。

 ホームランが多いということは、これまでの外野フライでアウトだった打球がスタンドまで届いているということでもあろう。

 技術的には日本球界におけるフライボール革命の浸透により、重心を軸足に残し、アッパー気味の強いスイングをする選手が増えているからでもある。

 ただ、打者が球を遠く飛ばす力は増しているが、“ヒット(ホームラン以外)にする技術”自体は、落ちているという見方もできる。

トップレベルの投手とそれ以外の差



 同じく同試合数消化時点での防御率も比較してみよう。

 巨人が3.70から3.43、ヤクルトが4.40から4.12、阪神が3.01から3.75、中日が4.53から3.47、広島が3.70から3.58、DeNAが3.41から3.76。打撃同様、中日に大きな改善傾向があり、逆に阪神が大きく落としている。全体的には改善傾向にある、と言っていいのかもしれない。

 それ以上に顕著なのが、“上位”の数字だ。2018年5月2日現在の防御率ランキングだが、2点台前半まではブキャナン(ヤクルト)1.80、メッセンジャー(阪神)1.82、東克樹DeNA)2.28。ほか2点台後半に大瀬良大地(広島)、秋山拓巳(阪神)、菅野智之(巨人)がいた。

 対して今季は同じく2点台前半までが、今永昇太(DeNA)0.98、山口俊(巨人)1.59、大瀬良大地(広島)1.64、床田寛樹(広島)1.89、大野雄大(中日)2.34、ほか2点台では西勇輝(阪神)、柳裕也(中日)、メルセデス(巨人)、野村祐輔(広島)と続き、明らかに多い。

 規定投球回はすなわち、先発がローテを守り、責任を果たしている証明でもある。

 数字は、いかようにも解釈できる。前述の大島氏の言葉のように、一線級投手であれば、この時代をむしろアドバンテージとでき、それができぬ二線級投手は打ち込まれている、という見方もできるし、先発が“過保護”になり過ぎている、という見方もあるだろう。球数や継投パターンにこだわり、7回無失点、8回無失点での交代も目立つ。

 ただ、もう一つの傾向として、トップ投手であれ、ホームラン禍を免れていないことがある。
 今季5失点の今永は被本塁打4、8失点の青柳も4本、10失点の大野は5本だ。少し下だが、前年被本塁打14の菅野はすでに8本塁打を浴びている。菅野は確かに防御率が3.21と昨年ほどではないが、全員ではないにせよ、セではむしろ防御率のいい投手ほど、本塁打による失点の比重が高いようにも映る。

 大振りの選手を好投手は御しやすいが、下位打線でも振り回す打者が増える中で、失投をとらえられる可能性が増えているというのが、このデータから感じられる。
 加えて、昔は好投手に対した場合、ゴロを打って、足を絡めてとも言われたが、いまはダメ元で大振りし、一発を狙ったほうが確率が高いという考え方になっているのかもしれない。

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週刊ベースボール編集部

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