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プロ野球回顧録

金村義明が語るドン・マネー「ナインは同情的。それほど近鉄の待遇は悪かった」

 

いまはなき近鉄バファローズの歴代外国人は、そのチームカラーを反映するように、個性あふれる実力派が多かった。なかでも強烈だったのが、80年代のドン・マネーリチャード・デービスラルフ・ブライアントという系譜。彼らとチームメートだった金村義明氏が当時の記憶を語った。

球団の待遇の悪さに怒り


ブリュワーズ時代にはオールスターに4回出場したほどの大物だったマネー


 僕にとってのプロ3年目、一軍と二軍を行ったり来たりしていた1984年に来日したマネーはすごかったですよ。ホームランをバンバン打ちましたからね。それが、開幕して約1カ月後の5月に退団。理由は球団の待遇の悪さでした。神戸のマンションも契約のときには球団が新築のマンションを見せておいて、いざ来てみたら中古のマンション。そこにゴキブリが出たことで怒って帰ってしまいました。

 1カ月でホームラン8本。すごいペースでしたね。右バッターでバッティングは素晴らしかった。インパクトの瞬間、最短距離でバットを出していく。メジャー通算1612安打のバリバリの四番、さすがやなあと思っていた中での退団。でも、ナインはみんなマネーに同情的でした。

 というのも僕は、中日西武も経験していますけど、待遇の悪さという点では、近鉄が際立っていました(苦笑)。社会人の延長みたいな感じで、プリンスホテルから入団してきたヤツが、プリンスのほうがよかったというぐらいの球団でした。

 フランチャイズ球場も汚さにかけてはワースト3のうち、2つを持っていましたからね。川崎、日生、藤井寺のうち後ろ2つ。当時の藤井寺はナイター照明もなく(84年から設置)、日生球場を借りて試合をしていました。トイレの匂いもきつくて不衛生。藤井寺球場には、選手専用駐車場もなかった。

 なんだかんだと言っても近鉄という球団は憎めないんですけど(笑)、もう少し待遇の悪さの具体例を挙げると、球場には雨をしのぐ全面シートもなくて雨で中止になることが多かった。そのしわ寄せがシーズン最終盤に来て、あの「10.19」の遠因になったわけです。選手会長時代には、オーナーに全面シートをお願いしたこともあります。オーナーは「なんだ、そんなものもないのか。すぐ買え」と言ってくれたけど、やめるまで見たためしがありません(笑)。自分たちでスポンジを使って雨水を吸収したりグラウンドにガソリンをまいて火をつけたりね、これがプロか……と。

 そんな球団だけに、外国人への待遇も推して知るべしでしょう。のちに来日するブライアントにしても、天王寺の小さいマンションからファンの人に混じっての電車通勤。チャーリー・マニエルから聞いたのは、日生の試合でホームランを打ったら神戸のマンションまでのタクシー代を出してくれと、当時の指揮官の西本(幸雄)さんに直接交渉していたそうです。

 マネーも来日中に、他球団の外国人と情報交換するじゃないですか。そうするとマンションから何まで全然違いますからね。他球団……特に巨人などとは雲泥の差がありました。それはそうでしょう。ゴキブリが出るような小さいマンションで暮らしていたんですから。マネーの問題が起こったときには、汚いロッカーでナインが「爆弾落ちたんか」と囁き合っていました。

写真=BBM

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週刊ベースボール編集部

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