史上6人目の通算300勝をマークした鈴木
プロ野球の歴史の中から、日付にこだわってその日に何があったのか紹介していく。今回は1984年5月5日だ。
近鉄の左腕、
鈴木啓示がプロ野球史上6人目、戦後生まれでは初の大偉業を成し遂げた。藤井寺で行われた
ロッテ戦に先発した鈴木は9回3失点の完投勝利をマーク。これが鈴木にとって通算300勝となった。
66年5月24日の東映戦(後楽園)でプロ初勝利を挙げ、プロ入り19年目、666試合目にして樹立した大記録。だが、それも鈴木にとっては通過点に過ぎなかった。最後の打者、
田村藤夫を一塁ファウルフライに打ち取った記念ボールを一塁・
加藤英司から受け取ると、それを惜しげもなくスタンドに投げ入れたのだ。
「200勝のヤツもないよ。300勝ぐらいで騒がないでほしい。300勝は神様が与えてくれた義務みたいなもの。ワシの価値はこれからいくつ勝つかで決まる。最低のノルマは
小山正明さん(元
阪神)の持つ320勝を超えること。そのときは、人に“尊敬する人は?”と聞かれたら迷わず言うよ。“それは鈴木啓示や”とね」
そこには“草魂”を座右の銘とする男のダンディズムが詰まっていた。
写真=BBM