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プロ野球1980年代の名選手

工藤公康 左の鉄腕が“新人類”だった時代/プロ野球1980年代の名選手

 

1980年代。巨人戦テレビ中継が歴代最高を叩き出し、ライバルの阪神はフィーバーに沸き、一方のパ・リーグも西武を中心に新たな時代へと突入しつつあった。時代も昭和から平成へ。激動の時代でもあったが、底抜けに明るい時代でもあった。そんな華やかな10年間に活躍した名選手たちを振り返っていく。

教育リーグへの野球留学が転機


西武・工藤公康


 現役時代に黄金時代を築いたダイエーの後身、ソフトバンクの監督として、その黄金時代を継続させている工藤公康。その現役生活は29年もの長きにわたり、ベテランになってから最年長記録を次々と更新する姿に上書きされている印象もあるが、1980年代にまでさかのぼると、もちろん若手。天性の明るさもあり、“新人類”の筆頭格として、ハツラツとした笑顔で旋風を巻き起こした。お立ち台で石毛宏典と繰り広げた漫才(?)も今となっては伝説の域だ。ただ、その当時は、のちに3チームを頂点へと導いて“優勝請負人”と呼ばれ、背番号47を左腕のナンバーとして浸透させる左の鉄腕へと成長していくことは、自身も想像できなかっただろう。

 名古屋電気高3年時に甲子園に出場し、2回戦でノーヒットノーランを達成。高校No.1左腕として注目を集め、プロの大争奪戦となったが、社会人の熊谷組に内定をもらい、12球団には断りの手紙を書いた。だが、その81年の秋、西武がドラフト6位で強行指名。

「断るつもりだったけど、その年まで監督だった根本(根本陸夫)さんが親父を口説き落としちゃった。話が違うじゃないかと、僕も反抗して、3日だけ家出しました(笑)」

 西武へ入団した82年は、奇しくも西武となって初優勝、日本一を飾ったシーズンだった。高卒ルーキーながら1年目から27試合に登板。

「でも試合の記憶がないんですよ。練習と雑用だけ。移動日も練習で、確かシーズンが始まって3カ月くらいは休みがなかったですからね」

 厳しい練習を課した廣岡達朗監督からは「坊や」とかわいがられたが、3年目の秋、米教育リーグへの野球留学が転機となる。マイナー選手のハングリーさに触れて一念発起、帰国すると、すぐに宮田征典コーチとフォーム改造に着手する。これで球速が10キロもアップ。すぐに結果も出た。迎えた85年に初の規定投球回到達、防御率2.76で最優秀防御率に輝いて王座奪還に貢献。速球に加え、大きく曲がるタテのカーブが猛威を振るった。

 翌86年は初の2ケタ11勝。圧巻は広島との日本シリーズだ。初めて第8戦にまでもつれた歴史的なシリーズで1勝2セーブ。3敗1分で王手をかけられて迎えた第5戦(西武)では、延長10回表一死二塁から救援登板、12回裏にはペナントレースでは経験のない打席に入ると、右翼線へサヨナラ打を放つ。その勢いで西武は逆転日本一を果たし、第8戦(広島市民)では胴上げ投手にもなって、MVPに輝いた。

80年代の最後に急失速したワケは?


 その翌87年は15勝、防御率2.41で2度目の最優秀防御率。リーグ最多の23完投も光る。巨人との日本シリーズでも2勝1セーブで2年連続MVPに。このときの胴上げでは唯一、輪の外からセンターのカメラに向かってジャンプ。現在では一般的になっているが(?)、胴上げでファンにアピールした(??)パイオニアでもあった。だが、西武V4の88年にも10勝を挙げたが、明らかに前年までの勢いは失われていた。翌89年は4勝。体が悲鳴を上げていた。ただ、肩やヒジの故障が原因ではない。

「よく遊びましたね(笑)。朝まで飲んで、次の日そのまま投げたら勝ったときもあります」

 暴飲暴食による肝機能障害で、医師も「このままだと死にますよ」。まだ20歳代も後半、選手生命だけでなく、生命の危機だった。そこから生活の改善に励む。かつて恩師でもある廣岡監督に教わった徹底した食事管理……でもない。

「かあちゃんには頭が上がらない(笑)」

 夫人と出会い、二人三脚で強敵(?)を打倒すると、91年に自己最多の16勝と完全復活、93年には初のシーズンMVPに選ばれた。

 夫人と築き上げたフィジカルの礎は、やがて九州ホークスが最強軍団になっていくための礎でもあった。FAで95年に移籍したダイエーを低迷期から黄金期へと引っ張り上げたが、ダイエー初優勝を前にした98年オフには、

「自分の体を実験材料にして、人間がどれだけやれるのかを試してみたいんですよ」

 と語っている。巨人、横浜、古巣の西武を経て“浪人中”の2011年12月に現役引退を表明。プロ入りから30年後、48歳のことだった。

写真=BBM

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週刊ベースボール編集部

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