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「主軸がFA移籍したチーム」の打撃成績はやはり落ちるものなのか?

 

過去12例を検証!


18年オフ、広島から巨人へFA移籍した丸


 2018年のシーズンオフに、広島の丸佳浩が巨人に、西武浅村栄斗楽天にFAで移籍した。それぞれ新天地でも活躍を見せており、その影響もあってか巨人と楽天は昨シーズンより好調だ。一方、攻撃の主軸を失った広島と西武は昨シーズンほどの勢いが見られない。やはり主軸を失ったチームの攻撃力は衰えてしまうものなのだろうか。今回は、「主軸がFA移籍した後のチーム打撃成績」を調べてみた。

 FA制度は1993年のオフから導入され、2018年オフまでに延べ90人がFAで他球団に移籍している。そのうち、チームの四番打者など打線の中心だった選手が移籍したケースで、FA移籍選手在籍時のチーム打撃成績と抜けた後のチーム打撃成績を比較してみた。

1993年 落合博満が中日から巨人にFA移籍


中日の打撃成績 1993年 ⇒ 1994年

打率  .256 ⇒ .2581(+.0021)
得点  538 ⇒ 535(-3)
安打  1133 ⇒ 1113(-20)
二塁打 168 ⇒ 173(+5)
三塁打 11 ⇒ 16(+5)
本塁打 158 ⇒ 108(-50)
打点  512 ⇒ 513(+1)
盗塁  29 ⇒ 65(+36)

 不動の四番だった落合が移籍した翌シーズンの中日は、特に本塁打の数が「-50本」と大きく減っているのが目立つ。とはいえ、1994年はパウエルが首位打者、大豊泰昭が本塁打と打点の2冠に輝くなど、クリーンアップの2人が好調だったため、全体の攻撃力はそこまで大きく低下しなかった。

結果:ほぼ変わらなかった

1994年 広澤克実がヤクルトから巨人にFA移籍


ヤクルトの打撃成績 1994年 ⇒ 1995年

打率  .250 ⇒ .2606(+.0106)
得点  486 ⇒ 601(+115)
安打  1105 ⇒ 1110(+5)
二塁打 173 ⇒ 187(+14)
三塁打 18 ⇒ 18(±0)
本塁打 130 ⇒ 147(+17)
打点  458 ⇒ 577(+119)
盗塁  78 ⇒ 102(+24)

 四番番だった広澤がFAで巨人に移籍したが、阪神から移籍してきたオマリーが広澤の穴を埋め、古田敦也・オマリー・池山隆寛の強力なクリーンアップを形成。前年を超えるチーム打撃成績となった。チームも見事にリーグ優勝し、日本一にも輝いている。

結果:上昇した

1996年 清原和博が西武から巨人にFA移籍


・西武の打撃成績 1996年 ⇒ 1997年

打率  .258 ⇒ .281(+.023)
得点  517 ⇒ 656(+139)
安打  1120 ⇒ 1293(+173)
二塁打 191 ⇒ 231(+40)
三塁打 19 ⇒ 43(+24)
本塁打 141 ⇒ 110(-31)
打点  494 ⇒ 610(+116)
盗塁  149 ⇒ 200(+51)

 西武の顔であり、不動の四番だった清原が抜けた西武だが、翌シーズンはチーム打撃成績が大きく向上。本塁打は少なくなったものの、そのほかの成績はいずれも大きく向上している。この年から打撃に専念した高木大成や新助っ人のマルティネスの活躍が大きかった。

結果:上昇した

1999年 江藤智が広島から巨人にFA移籍


・広島の打撃成績 1999年 ⇒ 2000年

打率  .260 ⇒ .256(-.004)
得点  586 ⇒ 591(+5)
安打  1180 ⇒ 1178(-2)
二塁打 200 ⇒ 182(-18)
三塁打 19 ⇒ 11(-8)
本塁打 152 ⇒ 150(-2)
打点  561 ⇒ 562(+1)
盗塁  76 ⇒ 114(+38)

 四番を務めていた江藤が巨人にFA移籍したが、翌シーズンもほぼ同じようなチーム打撃成績となった。江藤が抜けた穴は前田智徳金本知憲がうまくカバー。特に金本がトリプルスリーの大活躍だったのが大きい。

結果:ほぼ変わらなかった

2001年 片岡篤史が日本ハムから阪神にFA移籍


日本ハムの打撃成績 2001年 ⇒ 2002年

打率  .2557 ⇒ .2469(-.0088)
得点  593 ⇒ 506(-87)
安打  1221 ⇒ 1149(-72)
二塁打 209 ⇒ 213(+4)
三塁打 21 ⇒ 24(+3)
本塁打 147 ⇒ 146(-1)
打点  570 ⇒ 486(-84)
盗塁  95 ⇒ 72(-23)

 日本ハムで主に三番を務めていた片岡は、2001年オフにFAで阪神に移籍。その翌年の日本ハムは、片岡の代わりに三番に入った小笠原道大が首位打者になるなど大活躍を見せたが、チーム全体の攻撃力は大きく低下した。片岡の穴埋めはできたが、打線自体の勢いは失ってしまったようだ。

結果:低下した

2002年 金本知憲が広島から阪神にFA移籍


・広島の打撃成績 2002年 ⇒ 2003年

打率  .259 ⇒ .259(0)
得点  543 ⇒ 558(+15)
安打  1222 ⇒ 1219(-3)
二塁打 185⇒ 200(+15)
三塁打 11⇒ 12+(1)
本塁打 154⇒ 153(-1)
打点  516⇒ 539(+23)
盗塁  59⇒ 80(+21)

 2002年に全試合で四番を務めた金本が阪神に移籍し、序盤に代わりを務めた新井貴浩も成績不振に陥るなど、広島にとって難しいシーズンだった。しかし、新助っ人のシーツが好成績を残し攻撃力の低下を防いだ。

結果:ほぼ変わらなかった

2006年 小笠原道大が日本ハムから巨人にFA移籍


・日本ハムの打撃成績 2006年 ⇒ 2007年

打率  .269 ⇒ .25871(-.01029)
得点  567 ⇒ 526(-41)
安打  1227 ⇒ 1247 (+20)
二塁打 230 ⇒ 213 (-17)
三塁打 24 ⇒ 27 (3)
本塁打 135 ⇒ 73(-62)
打点  551 ⇒ 498(-53)
盗塁  69 ⇒ 112(+43)

 2006年、2007年とリーグ連覇を果たした日本ハムだが、チームの屋台骨を支える存在だった小笠原が巨人に移籍した影響か、チームの打撃成績はかなり低下してしまった。リーグ2位の防御率を誇る投手陣の頑張りがなければ優勝できなかったかもしれない。

結果:低下した

2007年 和田一浩が西武から中日にFA移籍


・西武の打撃成績 2007年 ⇒ 2008年

打率  .264 ⇒ .270 (+.006)
得点  564 ⇒ 715(+151)
安打  1265 ⇒ 1339(+74)
二塁打 231 ⇒ 270(+39)
三塁打 18 ⇒ 21(+3)
本塁打 126 ⇒ 198(+72)
打点  539 ⇒ 693(+154)
盗塁  118 ⇒ 107(-11)

 クリーンアップの一角を担っていた和田が抜けた西武だったが、序盤はGG佐藤、後半は中村がその穴を見事に埋めた。本塁打数、安打数、打点数、得点数は大幅に増えており、前年よりも迫力のある攻撃を見せる打線になった。

結果:上昇した

2007年 新井貴浩が広島から阪神へ移籍


・広島の打撃成績 2007年 ⇒ 2008年

打率  .263 ⇒ .271(+.008)
得点  557 ⇒ 537(-20)
安打  1287 ⇒ 1330(+43)
二塁打 209 ⇒ 193(-16)
三塁打 7 ⇒ 9(+2)
本塁打 132 ⇒ 100(-32)
打点  528 ⇒ 506(-22)
盗塁  65 ⇒ 69(+4)

 金本知憲が移籍して以降、チームの四番を担ってきた新井が移籍した翌シーズンは、本塁打数や得点数、打点数が前年より少なくなった。代わりに四番を務めた栗原健太が23本のホームランを放っているが、新井が抜けた穴を埋めきることはできなかったようだ。

結果:わずかに低下した

2010年 内川聖一が横浜からソフトバンクにFA移籍


・横浜の打撃成績 2010年 ⇒ 2011年

打率  .255 ⇒ .239(-.016)
得点  521 ⇒ 423(-98)
安打  1234 ⇒ 1106(-128)
二塁打 217 ⇒ 173(-44)
三塁打 16 ⇒ 13(-3)
本塁打 117 ⇒ 78(-39)
打点  501 ⇒ 408(-93)
盗塁  59 ⇒ 31(-28)

 内川がFA移籍した翌シーズンは大きくチーム打撃成績が低下している。規定打席到達者では唯一の3割打者だった内川が抜けた影響は大きかったようで、クリーンアップを務めた村田修一スレッジのホームラン・打点がかなり低下。打線のつながりが悪くなったといえる。

結果:低下した

2011年 村田修一が横浜から巨人にFA移籍


・横浜の打撃成績 2011年 ⇒ 2012年

打率  .239 ⇒ .2334(-.0056)
得点  423 ⇒ 422(-1)
安打  1106 ⇒ 1083(-23)
二塁打 173 ⇒ 164(-9)
三塁打 13 ⇒ 21(+8)
本塁打 78 ⇒ 66 (-12)
打点  408 ⇒ 400(-8)
盗塁  31 ⇒ 61(+30)

 内川がFA移籍した翌年に四番の村田もFA移籍。2年連続で攻撃の中心を失った影響は大きく、チーム打撃成績は2年連続で低下した。

結果:わずかに低下した

2016年 糸井嘉男がオリックスから阪神にFA移籍


オリックスの打撃成績 2016年 ⇒ 2017年

打率  .253 ⇒ .251(-.002)
得点  499 ⇒ 539(+40)
安打  1199 ⇒ 1197(-2)
二塁打 208 ⇒ 190(-18)
三塁打 12 ⇒ 23(+11)
本塁打 84 ⇒ 127(+43)
打点  475 ⇒ 519(+44)
盗塁  104 ⇒ 33(-71)

 2016年にクリーンアップやリードオフマンとして活躍した糸井が抜けたオリックスだが、盗塁数は大幅に減ったものの、吉田正尚ロメロの活躍もあり、得点力は前年以上の勢いを見せた。

結果:わずかに上昇した

 過去12例を調査した結果、

・上昇した:3例
・わずかに上昇した:1例
・ほぼ変わらなかった:3例
・低下した:3例
・わずかに低下した:2例

となる。意外にもそこまで大きな差はなかったが、主軸の離脱は時に大きな攻撃力の低下を招くこともあるようだ。

 また、12球団最多の16人が移籍している西武は、「移籍慣れ」をしているのか穴埋めが上手なようで、主軸選手が移籍した翌年は見事に打撃成績を向上させている。この例をそのまま当てはめるなら、今シーズンの西武は昨シーズン以上のチーム打撃成績を残す可能性がある。広島も江藤や金本、新井の穴をうまくカバーしてきたため、丸がいないことの影響はそこまで大きくないかもしれない。ただ、昨シーズンほどの勢いのない両チームの現状を見る限りでは、穴埋めがうまくいっているとは言い難いが……。

 攻撃の主軸が移籍した西武と広島が最終的にどのような結果を残すのか、その点にも注目しながらレギュラーシーズンを楽しんでみてはどうだろうか。

文=中田ボンベ@dcp 写真=BBM
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