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【MLB】スーパー代理人でも予測困難。現在のMLBのFA市場

 

アナリティックの分析が進んだことで実績のある投手より、これからの投手のほうがいい契約を結ぶようになっている現状がある。9年連続2ケタ勝利のゴンザレスもようやくメジャー契約を交わした



 先発左腕ジオ・ゴンザレスがブリュワーズと1年200万ドルで契約し古巣復帰が決まった。インセンティブで最大200万ドルがプラスされる。ゴンザレスは、交渉担当者をスコット・ボラス代理人からCAAに変更している。ウインターミーティング中、菊池雄星に雇ってもらえなかった代理人がこう話していたのを思い出す。

「ボラス代理人にはこのオフ、左の先発投手の顧客がダラス・カイケル、ジオ・ゴンザレス、菊池と3人もいる。顧客が納得、満足できるように、左の先発投手が欲しいチームと同時進行で交渉していくのは難しいものだ」と。

 結果、カイケルはいまだに契約できていない。ゴンザレスはヤンキースと3月にマイナー契約し、3Aで昇格を待ったが上げてもらえなかったためオプトアウト。ようやく今、ブリュワーズからメジャー契約を得た。とはいえ当初期待したものよりはるかに低い額なのは間違いない。

 一方で、菊池はマリナーズと4年5600万ドル。素晴らしい契約を勝ち取った。ゴンザレスは2012年の21勝を含め9年連続2ケタ勝利中で、通算127勝97敗。カイケルは15年のサイ・ヤング賞投手で、昨季18年も強豪アストロズで34試合に先発、204イニングを投げ、防御率3.74だった。

 一方菊池はメジャーの実績はゼロ。つくづくMLBのFA市場は変わってしまったのだと感じる。今のMLBでは、過去の実績がどうのではなく、アナリティック(データ分析、解析)をもとにその選手が今後どれだけ活躍できそうかの予測を立てオファー額を決める。ボラス代理人は長年この業界の第一人者で、数え切れないほど多くの大型契約を勝ち取ってきた。

 しかしながらゴンザレスとカイケルについてはマーケットの動きを読み切れず、高額の要求をして、合意できなかったのだろう。もっとも相場を読みきれなかったのはこの2選手についてだけではなかった。マーティン・マルドナド捕手はアストロズから2年1200万ドルの残留オファーを受けたが、それを拒否してFAになった。だが、良いオファーはなく、マルドナドはボラス代理人を解雇、ダン・ロザーノ代理人を雇い、ロイヤルズと1年250万ドルでサインした。

 マイク・ムスタカス三塁手は17年オフ、ロイヤルズからの1740万ドルのクオリファイングオファーを蹴ってFAになった。だが複数年契約はなく、ロイヤルズと1年契約(550万ドル+100万ドルのバイアウト)、18年のオフもブリュワーズと1年契約(700万ドル+300万ドルのバイアウト)だった。17年オフ、クオリファイングオファーを受け取っておいたほうが賢明だったのである。

 一方で菊池は、メジャーでの実績がゼロながら、27歳の若さ、左腕で95マイル(約152キロ)の真っすぐを投げられることから、マリナーズが長く活躍できると予測、好契約を提示した。先オフの投手のFA市場では、パトリック・コービンの6年1億4000万ドル、ネイサン・イオバルディの4年6800万ドルに次ぐ3番目の高額である。アナリティックは、守備シフト、早めの継投など戦術を変えただけでなく、FA市場にも大きなインパクトを与えている。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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