典型的な負けパターンだった。5月12日の
広島戦(マツダ広島)は序盤にリードを奪われると、打線は淡白な攻撃で沈黙。5回、
伊藤光が放った3号ソロでの1点のみで広島・
アドゥワ誠に初完投を許してしまった。昨季から打線の“反発力”のなさは顕著で、劣勢の状況を打線がひっくり返した試合は数えるほどしかない。
5月13日時点で、チーム打率.233(リーグ最下位)、得点133(同最下位タイ)。
筒香嘉智、ロペス、
宮崎敏郎、
ソトといった主軸のバットが火を噴けば、勝ち。ダメならお手上げ。そうした攻撃陣の“待ち”の状況から、ノーヒットでも能動的に動いて1点を奪いにいく野球を目指さなければ、限界がある。やはり、多少なりとも「スモールベースボール」の意識が必要になる。
振り返ると2017年、日本シリーズの敗戦を受けて、ラミレス監督は盗塁、小技の重要性を痛感。シーズン終了翌日に「スモールベースボール」への移行を誓った。昨季は打線のつなぎ役として
大和、俊足の
神里和毅の加入もあり、春季キャンプから能動的な攻撃の意識が浸透していったように見えた。
しかし、ラミレス監督のコンピューターを狂わせたのが、ソトの存在だった。当初はロペス、宮崎のバックアップ役を期待されていた助っ人が二番に入るや、勝負を決める長打を連発。昨年5月、指揮官は「ソトは二番で使っていく。スモールベースボールというより、攻撃的な野球になる」と路線変更を決断したのだった。結果、ソトは来日1年目で本塁打王に輝いたのはご存知のとおり。
今季も打線には筒香、ロペス、宮崎、ソトという強力スラッガーが並んでいたが、自打球の影響と不振で12日の試合からソトがスタメンを外れた。これを機にスタメンで出場するスラッガーを絞ってはどうか。そのときに調子のいい上位3人をクリーンアップに座らせ、自由に打たせるのだ。その一方で投手を含めた残りの打者6人は、出塁とつなぎ役に徹した打線を組む。
状況打破のために新戦力も積極的に使っていきたい。今季、ファームでチームトップの四球を選んでいる3年目の内野手、大河などは面白い存在だと思うのだが……。
文=滝川和臣 写真=井田新輔