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川口和久WEBコラム

ナボナを抜いた、とらやの羊羹?/川口和久WEBコラム

 

集中力の勝利


坂本は完全に覚醒した



 お菓子のホームラン王・ナボナを、とらやの羊羹(ようかん)が抜いたね……。
 いや、スイーツの市場動向とか、食レポみたいなコラムじゃないよ。
 出だしから分かりにくいか……。まあ、読んでください。

 すでに止まってしまったが、巨人坂本勇人が開幕から36試合連続出塁のセ・リーグ新記録をつくった。34試合のときは、王貞治さんの球団記録を抜いたと話題になった。
 広島鈴木誠也に抜かれるまでは三冠王で、5月15日現在、セのホームラン王でもある(鈴木とタイ)。打率は2016年の首位打者から高値安定になっていたけど(17年除き)、今年は長打力もすごい。

 昔は、引っ張りばかり目立つ選手だったのが、いまはセンター中心を意識しながら、ライトにも強い球が飛ぶ。扇状にまんべんなく、打っている。

 40本塁打以上は難しいにしても、バレンティンヤクルト)の離脱もあるし、今年は爆発力ある外国人選手がいない。このまま鈴木と三冠王争いを演じる可能性も十分ある。 
 攻撃だけじゃなく、守備でも体がキレているし、頼もしい選手になったな。

 技術レベルはもともと高かったが、今年の坂本を見て一番成長を感じるのは、1打席1打席を大切にするようになったこと。3打席目までヒットがなくても4打席目にヒットを打ったりしている。
 はっきり言って、俺がコーチ時代の坂本は、そんな選手じゃなかった。3打席ダメで、しかも試合の趨勢がはっきりしていたら、4打席目は集中力が切れたように淡泊になることがあった。

 天才肌の選手によくあるパターンだね。勝敗が見えたのに、こんなにしゃかりきに打っちゃ悪いと無意識になっているのかな。

 そういえば、俺のコーチ時代、坂本が、まったく気のない見逃しの三振をした後、原辰徳監督が鬼の表情ですぱっと代えたことがあった。
 当時から原監督は坂本に対し、ほかの選手以上に厳しくしていた印象がある。

 自分が見つけ、ここまで育てた選手だからだろうね。長嶋茂雄さんと松井秀喜じゃないけど、2人には継続したドラマを感じるな。

 少し心配なのは、巨人がいま、坂本イコールになっている印象があること。
 彼の調子が上がって、勝ち進んだが、彼が落ちてきたときにどうなるのか。

 チームの勝敗を背負うプレーヤーになってきたことは素晴らしいことだし、いまは、このプレッシャーを苦にしてないようにも見えるが、負けが込んできたりすると、ドシンと重く感じるときもあるんじゃないかな。

 巨人ならON、広島なら山本浩二さん、衣笠祥雄さん。一流から超一流への最後の一歩を踏み出すときが来ているのかもしれないね。

 問題は腰の爆弾かな。もしかしたら、それと付き合っていく中で、自然と時々、流すようになっていたのかもしれない。
 それが今年は4年連続V逸のチームをなんとかしなきゃという思い、原監督復帰による緊張感、期待に応えなきゃという思いで、かなり無理もしている。
 楽しみなような、心配なようなシーズンだね。

 あ、冒頭の説明を。
 俺は最近、坂本を見て、「ああ、とらやの羊羹だな」と思っていた。あの羊羹は、高級品で、しかもうまい(川口的ですが)。坂本も、あれだけ顔がよくてスタイルがよくて、しかも中身が入ってきた。似てないかな。
 王さんは「お菓子のホームラン王です」とナボナを宣伝していたから、上記のようなタイトルとなったわけです。
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