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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

巨人・山本泰寛が好パフォーマンスを維持するために――井端弘和氏の視点

 

4月中旬以降、二塁で先発出場を続けている巨人山本泰寛



 プロ入り4年目の山本泰寛が故障離脱の吉川尚輝に変わり、二塁での出場のチャンスをつかんだ。当初は対左投手での先発起用が多かったが、吉村禎章打撃総合コーチから原辰徳監督への進言もあり、対右投手でも出番を増やし、5月15日終了時点で24試合に出場。規定打席には到達していないものの、打率.303と3割を超えるアベレージをキープして期待に応えている。打席内での粘り強さも魅力で、出塁率も.410。その好調さから一番に座る機会も増え、“代役”以上の働きには指揮官も「彼はレギュラー」とパフォーマンスを高く評価している。

 そんな4年目内野手の活躍を「頑張っていますね」と喜びながらも、「長く活躍してほしいから」と厳しい目を向けるのが昨季まで巨人の一軍内野守備走塁コーチを務めていた井端弘和さんだ。井端さんがコーチに就任した2016年に山本が入団(プロ1年目)。2人は3年間師弟関係にあった。山本の先発定着から約1カ月、成長をすぐそばで見てきた井端さんには、攻・守に気になる兆候が見え始めているという。

 まずコーチ時代の担当とは異なるものの、一塁ランナーコーチとしてつぶさに見てきた山本の打撃だ。追い込まれても打席内で粘れること、小柄な割にパンチ力もあることが山本の魅力とするが、「試合に出始めた1カ月前と比較して、粘れてはいるものの、少しずつタイミングが遅れ始めています。これは山本が打撃を崩すときのサイン」と心配する。

「ピッチャーが投げようとしている段階に来ても、まだ動いてしまっています。良いときは逆方向に打つ場合も、ファウルにするときも、違うボールを待ってカットするときも、そして狙っていたボールを打つときも、早めにタイミングを取り、自分の間合いで待てています。でも、今はタイミングの取り方が遅いので、このままではファウルを打とうと思っても打てないし、待っているはずのボールも打てません。カウント0‐0からでも遅れて、あわててバットを振っているように見えます。ワンハンドでさばこうとする場面も増えてきましたが、それだけ間が取れていない証拠です」

 先発の機会が増えてから1カ月、データも増え、マークも厳しくなる。一番を打つ場合、好調の二番・坂本勇人、三番・丸佳浩の前に走者を置きたくないと対戦相手が考えるのは当然で、「毎度やられるわけにはいきません。本腰入れて研究しようか、となるのがプロ」と井端さん。つまり、徐々に研究が進み、厳しい攻めがタイミングを崩される要因の1つというわけだ。ただ、それらを乗り越えるのも「逆に研究し尽くすことも大切ですが、その上で、いかに基本に忠実にやれるか。早めにタイミングを取って、自分の間を保つこと」以外にはなく、これらの継続を期待している。

 一方、守備では慣れを指摘する。「スローイングが気になります。下を使い、相手に向かって投げることが基本なのに、いまは上半身だけ。しかも投げた後、しっかりとターゲット方向に指が向くのではなく、例えば一塁送球ならライト方向に流れてきています。余裕のあるときならば隠せますが、目いっぱいのプレーのときにどんなミスにつながるか……。“そこ”に投げる意志を持ってほしいですね」。打撃と同様、大切なのは基本に忠実であること。ゴールデン・グラブ賞7度受賞の名手だからこそ知る極意は「頑張って、試合に出続けてほしいから」と、愛のあるアドバイスである。

 開幕から1カ月半、6月には交流戦も待っている。二塁の定位置獲りを目指す山本泰寛は、今後、どんなパフォーマンスを見せてくれるだろうか。注目したい。

文=坂本 匠 写真=小山真司
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