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佐々木朗希擁する大船渡高の敗戦から浮き上がった3つの影響力

 

大船渡高は春季県大会1回戦で敗退したため、佐々木朗希の最後の夏となる岩手大会はノーシードで迎える


 163キロ右腕・佐々木朗希(3年)を擁する大船渡高が釜石高との岩手県大会で初戦敗退(4対5、延長10回)を喫した。勝負事であるから、白星を挙げてこそ評価されるが、春は「結果」よりも「強化&内容」を追求する位置づけ、という考え方もある。

 なぜなら、本番は甲子園出場をかけた夏であるからだ。大船渡高は県大会8強進出以上に与えられるシード権を逃し、最大で7試合を勝ち上がらなければならない「ノーシード校」となった。公式戦で経験した敗戦は必ず、次へとつながる。あくまで春は夏への試金石だ。

 今春の大船渡高の敗戦から浮き上がった、3つの影響力を挙げる。

 最もホッとしたのは、NPBスカウトではないだろうか。投手の肩、ヒジは「消耗品」と言われる。今春の公式戦、佐々木は沿岸南地区準決勝・代表決定戦(対住田高)での3イニングのみ。釜石高との県大会1回戦では「四番・右翼」で出場し、登板機会はなかった。

 大船渡高・國保陽平監督は一貫として、佐々木を決して酷使させず、細心の注意を払って育成してきた。中学時代にはかつて、ダルビッシュ有(現カブス)、大谷翔平(現エンゼルス)も悩ませた腰や股関節の成長痛を経験。一般的に大型投手は「時間がかかる」と言われる中、國保監督はコンディションや状況に応じて、慎重に起用してきた。3年春を迎えてもその姿勢は変わらず、あくまで夏をピークに持ってくるため、無理をさせなかった。すでに、佐々木は3月から4月にかけての練習試合、また高校日本代表合宿では163キロを計測しており、プロからの「評価」は決まっている。ドラフト1位競合は確実。「現状」よりも「将来」を見据えるプロ関係者にとっては、大歓迎の起用だったはずだ。

 2つ目は2番手投手の育成だ。釜石高との1回戦で1試合を投げ切ったのは背番号10を着ける右腕・和田吟太(3年)。4対4で9回を終えて、延長に入ってからもベンチは動かなかった。勝負に徹するのであれば、佐々木投入も考えられたが、國保監督は公式戦でしか味わえない舞台を和田に経験させている。結果的に10回裏にサヨナラ負けを喫する形となったが、夏は佐々木一人で岩手代表を勝ち取るのは難しい。どこかで和田の力が必要な場面がくる。意義のある「続投」であった。

 最後に、夏の展望。岩手大会の公立校の優勝は1994年の盛岡四高を最後に、私学が代表校を占めている。この間24年の代表校は盛岡大付高(10)、花巻東高(7)、専大北上高(4)、一関学院高(2)、盛岡中央高(1)の5校であるが、大船渡高の「ノーシード校」は、夏を占う上で大きな影響をもたらす。つまり、早い段階で大船渡高が私学強豪校と対戦する可能性がある。順調に勝ち上がった場合、佐々木の疲労蓄積が予想される準々決勝以降ならともかく、大会序盤の顔合わせだけは回避したいのが本音だろう。つまり、佐々木が体調万全で来れば、超高校級ピッチャーを攻略するのは相当難しいはず。

 不気味なノーシード校。果たしてこの夏、大船渡高がどこのブロックに入るのか、興味は尽きないところ。気の早い話であるが、6月26日に行われる岩手大会の組み合わせ抽選会から目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=井沢雄一郎
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