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充実の時を迎える明大の「4年生野球」

 

明大の主将・森下(左)は慶大1回戦で2失点完投。副将・北本(右)が初回に先制2点適時打を放ち、試合の主導権を握った。明大は最上級生がチームをけん引している


 4年生野球。最上級生がムードを作り上げるのが、大学野球におけるチーム運営上で、理想の形である。2016年秋以来の東京六大学リーグ戦での優勝奪回を狙う明大は、まさにそのスタイルを神宮で体現している。

 勝ち点3同士、リーグ制覇をかけた大一番。慶大1回戦(5月18日)で先制2点適時二塁打を放ったのは明大の副将で、四番を張る北本一樹三塁手(4年・二松学舎大付高)だ。序盤に主導権を握った明大は5対2で逃げ切り、エース兼主将・森下暢仁(4年・大分商高)が完投勝利で、今季4勝目を挙げている。

 昨年11月の新チーム結成時、明大・善波達也監督が描いていた新主将の最有力候補は北本だった。ところが、北本は同秋の早大2回戦(10月14日)で左肩を脱臼。同月末に手術を受け、戦線離脱を余儀なくされた。

 秋のシーズンが終わって2週間、善波監督は頭を悩ませた。しかし、そんな不安も吹き飛んだ。指揮官は森下の練習での“変化”を敏感に察したからだ。ドラフト1位候補の155キロ右腕・森下はどちらかと言うとおとなしいタイプで、人前で話をするのも苦手なほうだった。しかし、指揮官の目には、森下がチームをけん引していく姿勢に映った。手術明け、北本がチームに戻った後に時間をかけて話し合った末、主将・森下が誕生している。

 立場が人を変える――。森下はエースとしてだけではなく、伝統のメイジを引っ張っていく強い自覚が芽生えたのだという。

 とはいえ、投手兼任キャプテンは大きな負担がかかる。投手、野手で練習メニューが異なるケースもある。そんな状況下で、森下を側面からサポートしているのが北本だ。「主将と同じくらいの気持ち。森下とセットでやっており、野手をまとめている」。

 しかしながら、自身がケガから復帰するまでは、苦しい時間を過ごした。全体練習に合流したのは3月に入ってからで、実戦に戻ったのは3月末。焦りがなかったと言えばウソである。チーム全体が激しい競争を繰り広げている間も一人、リハビリを続けるのはつらい日々だったというが、とにかく前を向いた。

 懸命なウエートトレーニングで、体重は5キロアップ。目の前にできることに専念し、黙々とトレーニングに励んだ。その成果を今春、大一番の慶大1回戦で発揮してみせたのだ。

「今日は『初回から点を取ろう』と言ってきた。一、二番がチャンスを作ってくれたので、四番としては打てないといけない。インコースの真っすぐを張っていて、1球でとらえることができてよかった。今まではピッチャーに頼り切り。(リーグ戦も終盤で)ピッチャーも研究されてくる。野手が助けていきたい」

この日の明大の先発9人メンバーは、副将・北本を含めて8人の4年生が名を連ねた。主将・森下とバッテリーを組むのは西野真也(浦和学院高)。三番・内山竣(4年・静岡高)は2打点を挙げ、エースを強力援護している。このほか副将の和田慎吾(常総学院高)、喜多真吾(広陵高)の2人に、内野手寮長の清水頌太(春日部共栄高)とチームの中核をなす人材がグラウンドで躍動しているのは心強い。

 2019年は亥年。今春、ユニフォームの左袖には、かつて明大を率いた島岡吉郎元監督の干支にちなんで縫い着けていた「猪ワッペン」が30年ぶりに復活。また、チームスローガンは「猪突猛進〜All for Win〜」。投手としてのレベルに加え、人間的にも大きく成長した主将・森下を全員でバックアップする「4年生野球」は、充実のときを迎えている。

文=岡本朋祐 写真=矢野寿明
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