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ベースボールゼミナール

ダルビッシュ有が勝ち星をつかめていない理由は?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.トミー・ジョン手術から復帰したカブスのダルビッシュ有選手が思うように勝ち星をつかめていません。球速や変化球など、テレビで見る限り、手術以前と変わりがないように思えるのですが、なぜ結果がついてこないのでしょうか。(群馬県・18歳)



A.移植したヒジが馴染むまでには時間がかかる


カブスのダルビッシュ有(写真=Getty Images)


 質問をいただいた時点と状況は変わってきていると思いますが、5月21日時点で10試合に投げて2勝3敗、防御率5.06ですから、確かに数字自体は物足りなさが残ります。ただ、この日、10試合目のマウンドに登り(対フィリーズ)、6回4安打7奪三振3失点と十二分な内容で、少しずつ状態を上げているのも事実です。

 私の持論として、スピードは肩に関係があり、ファストボール、変化球のコントロールはヒジからくる影響が大きいと考えています。すでにスピードは155キロ前後まで出るようになっていますが、一方でコントロールには苦しんでいて、これはトミー・ジョン手術を行った右ヒジの影響でしょう。

 ゲームで投げられるコンディションまで回復したとはいえ、ヒジのじん帯を別の個所から移植して再建しているのですから、以前のように力強いボール、キレ味鋭い変化球を思いどおりにコントロールするまでにはもう少し時間が必要です。ただでさえ多くの球種を、繊細に操っていたのですから、本人はそのレベルを目指して投げていても、微妙な狂いが生じていて、打たれる、というケースもあるのではないでしょうか。これが勝ち星につながっていかない原因の1つ(チームの援護やリリーフの兼ね合いももちろんあります)だと私は感じています。

 そもそも、移植したじん帯が馴染むまでにはかなりの時間がかかると言われています。現場復帰するのに14〜16カ月(ここはクリアしています)。その上で、2〜3年が必要で、それだけの時間をかけてようやく以前のように違和感なく手術したヒジを使えるようになるようです。

 ちなみに、復帰してから2〜3年すると、スピードがプラス5キロ程度増す選手が多いようです。これはじん帯が馴染んだことと、その間のトレーニングがうまくいった結果なのですが、このことを考えると、ダルビッシュ選手はいま、そしてもうしばらく我慢の時が続くと考えられます。

 復帰直後のシーズンで球数も制限されていますし、ゲームの中で徐々に良くなってきても、5回、6回というところで交代を余儀なくされますから、例えば先制を許しても勝ち越すまで頑張って投げる、という状況にはなりづらい。勝ち負けも大事ですが、我慢して状態を上げることと内容を重視することが大切です。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。
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