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ベースボールゼミナール

自由に盗塁のスタートを切ることが許される選手とは? また「自由」の程度は?/元中日・井端弘和に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は走塁編。回答者は現役時代、たびたび好走塁を披露した元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.プロでは選手によっては自由に盗塁のスタートを切ることが許されていると聞きます。そのような選手の特徴を教えてください。また、どの程度まで「自由」は許されているのでしょうか。制限はありませんか?(山口県・19歳)



A.行けると判断したのならば誰でも盗塁を狙ってOK


現役時代の井端氏


 まず、盗塁の「自由」が許されている選手についてですが、これは全員です。質問の方は勘違いをされているようですが、選手によって許される、許されないというものではなく、行けると判断したのならば誰でも盗塁を狙うことができます(少なくとも私の所属した中日、巨人ではそうでした)。

 足の速い選手は常に次の塁を狙っているわけですが、そういう選手はバッテリーも警戒をします。その警戒をかいくぐって、狙えるならば狙う。自重するならば自重する。一方で、いわゆる足が速くはない選手に対しては、バッテリーの警戒が緩まったり(1度けん制を入れたら2度目がなかったり、クイックが緩まったりします)、そもそも無警戒(スキが生まれる)になる瞬間が生まれることがあります。常に注意を払って周りを観察している選手は、この瞬間を逃しませんし、無警戒ならばむしろ積極的に走るべきで、制限をする必要はありませんよね。

 選手が意識を高くして見ていればベストですが、そうでない場合、もしくはスタートを切ることに勇気を持てないランナーの場合には、一塁ベースコーチがバッテリーの動きを観察して、そっとランナーに「狙えるぞ」と伝えて背中を押してあげることもあります。逆に「これ、狙っていいですかね?」と選手から言葉が出てくるようなチームは強いですよね。

 全員が盗塁のスタートを切ってかまわないと解説しましたが、とはいえ状況によっては制限ももちろんあります。質問にもどの程度まで「自由」が許されているか、とありますが、これはチームによって、また選手によっても異なります。チームであれば、たとえば5回まで、あるいは7回まで「自由」が許されていて、8回、9回はサインどおりというのが基本的な一例。ただ、緊迫した投手戦、乱打戦、大量得点差がついているなど、試合展開によっても異なり、その都度、監督(もしくはコーチ)から指示があるので、選手はそれに従うことになります。

 一方で走塁のスペシャリストと呼ばれる存在がいて、そういう選手には全体に与えられる制限とは異なる自由が与えられている場合もあります。「盗塁」のサインが出なくても常に「行けるなら行け」と。これもチーム、またはその選手の信頼度によって異なりますね。

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。

写真=BBM
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