昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 江夏豊初勝利
今回は『1967年5月22日号』。定価は60円。
4月15日に来日した大洋のスチュアート。4日後の19日にデビューし、6試合で3本塁打とよく打ったが、守備でも3失策と、こちらにはもろさがあった。
それでも大物加入で四番の
桑田武をはじめ、打線全体が活性化し、メガトン打線復活と騒がれた。さらに、新人遊撃手の
松岡功祐、南海から移籍し、5月7日時点で4勝、うち巨人戦2勝の
森中千香良らの活躍もあって、大洋は台風の目的存在になっていた。
開幕から4試合に投げ、いずれも4回ともたなかった
阪神の新人・
江夏豊。もともと球は速いが、ノーコンとあって、しばらく時間がかかるのでは、という声が多かった。
5試合目となった4月29日の
広島戦も
川崎徳次コーチは、「5回もてば上出来」と先発させたが、その5回まで無安打。結局1失点完投でうれしいプロ初勝利を飾った。
試合後、「うれしいです。この感激を忘れないようにしたいです」と初々しく語る江夏の小脇にはボール箱が2つ。大物とはいえ新人は新人。この年は、ボール係で、遠征の際には大きなカバンでボール運びもしていた。
5月3日には、かつての大物新人、東映の
尾崎行雄が南海戦で通算100勝を挙げた。62年の入団だから6年目となる。63年の7勝を除けばすべて20勝以上だから順調といえば順調なのだが、この年は指のマメやフォームの乱れなどもあって、4月11日、東京戦の初勝利後、なかなか勝ち星に恵まれなかった。
実は、この日の試合前、尾崎は外野で50円玉を見つけた。尾崎は「コーチにグラウンドで小銭を拾うなんて珍しいといわれ、これもつきの神だと、ポケットに入れて試合に臨んだ」という。
観客が投げ込んだのか。
打率では、セが巨人・
土井正三、パが近鉄・
土井正博と、2人の“土井正”が打率首位に立って話題になっていた。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM