チームの最後の砦としてマウンドに上がるクローザー。勝利を得るために必要不可欠な存在だ。開幕から約2カ月経ったが、ここではセ・リーグ各球団のクローザー事情を見ていこう(記録は5月27日現在)。 読売ジャイアンツ
8戦6セーブのR.
クックが開幕からクローザーを託されていたが、右ヒジ違和感のために5月を待たずに戦線離脱をしたため、以降は
原辰徳監督の「リリーフ陣全員でカバー」の意向通り、日替わりで最後の担い手は変わる。リリーフ再々転向の
澤村拓一、
野上亮磨に1セーブずつがつくが、最も安定しているのは4年目左腕の中川皓太だ。開幕から16戦連続無失点投球を続け(20試合登板で1失点)、「最も力のある打者のところで起用したい」と指揮官の信頼を勝ち得ている。1000試合登板、400セーブの球界のレジェンド・
岩瀬仁紀(元
中日)を彷彿させるスリークォーターで、変化の大きいスライダーの使い手という点も共通。ゆくゆくは、球界を代表する左腕となるかもしれない。
中日ドラゴンズ
リーグトップの14セーブを記録しているのが、鈴木博志だ。2年目の鈴木博がクローザーに定着したのは今季から。昨季は
田島慎二の不調などで抑え役が定まらず、通算407セーブの岩瀬仁紀も現役を引退した。そこで入団時から抑え役を希望していた鈴木博に白羽の矢が立った。150キロ超の速球と三振が奪えるカットボールに、今年の春季キャンプで
杉下茂、
野茂英雄という往年のフォークの使い手から直々に伝授された高速フォークが武器。防御率3.60と数字は物足りないが、クローザーは1点差以上のリードを保ちさえすればいい。リーグトップの14セーブは、鈴木博が失点しても“負けない”クローザーであることを証明している。
広島東洋カープ
3年連続セ・リーグ胴上げ投手の中崎翔太が、今季も開幕から不動の守護神だ。5月27日までにセーブは6(2勝2敗、2ホールド)と、まずまず挙げてはいるが、首位チームのクローザーとしては、やや物足りない数字。すでに2敗を喫していることからも分かるとおり、いつもの安定感は欠いている印象だ。5月21日の中日戦(三次)でも、3点リードで最終回のマウンドに上がったが、福田のソロと高橋の二塁打で1点差とされ、最後は二死満塁から何とか抑え切る薄氷のセーブだった。「いつもと変わりはなかった。勝ててよかった」と、本人はいつもの様子だったが、今後のペナントレースのヤマ場に向け、本来の調子を取り戻してほしいところだ。
東京ヤクルトスワローズ
昨季リーグ2位の35セーブを挙げた
石山泰稚が5月上旬に故障離脱するという緊急事態を迎えた。チームは11連敗と、セーブ機会がなかなか訪れない苦境の中にいる。代役守護神を務める梅野雄吾は高卒3年目とまだまだ経験が浅い。5月15日の広島戦(マツダ広島)では4点リードで9回のマウンドに上がったが、勝利目前で同点に追いつかれてしまう。そしてチームは延長サヨナラ負けを喫した。この右腕が勝ちパターンの9回のマウンドに向かう姿は久しく見られていない。負の連鎖を払拭したいが、今のところその手立ては見つかっていない。
阪神タイガース
今季も守護神として9回のマウンドに上がる。150キロ台の真っすぐのコントロールが昨季以上に良くなったことで、130キロ台後半のフォークがさらに生きており、打者にとり厄介な存在になっている。ここまで22試合に登板し22回1/3を投げ24個の三振を奪っている。セーブも中日の鈴木に次ぐリーグ2位の11個。今季の阪神は少ない得点を守り勝つチームだけに、17年のセーブ王の経験が阪神の勝利に大きな役割を果たしている。
横浜DeNAベイスターズ
昨季のセーブ王、山崎康晃が今年もクローザーを務める。チームの状況もありセーブ数は伸びていないが、16試合1勝1敗6セーブ、防御率1.20と安定しており、今後タイトル争いに加わってくる可能性は高い。不安材料は本拠地での失点の多さだ。今季の自責点「2」はすべて横浜スタジアムでのもの。4月25日の阪神戦(横浜)では1点リードの9回に
近本光司に痛恨の逆転3ランを浴び、負け投手となっている。今年も他球場では防御率0.00と好成績を残しているだけに、横浜スタジアムにおける苦手意識の克服がタイトル防衛のカギとなるだろう。
写真=BBM