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高望みしない? 巨人・中川皓太、好投のワケ

 

5月29日時点で21試合に登板し、1勝8ホールド3セーブ、防御率は0.39の安定感を見せる巨人中川皓太


 巨人・菅野智之は、開幕を前に「3年連続沢村賞」と「20勝」を今シーズンのターゲットに定めた。現在は腰の違和感により登録抹消中だが、ここまで8戦5勝(5月29日時点で勝利数は1位タイ)。防御率4.36が物語るように苦しいピッチングも少なくはないが、自分に厳しく野球に対してストイックな右腕は、復帰後の巻き返しを誓い、ジャイアンツ球場で調整を続けている。

 選手の目標設定の方法は十人十色で、この菅野のようにターゲットを公言することで自らにプレッシャーをかけパフォーマンスにつなげる選手もいれば、黙々と数字を積み重ねて前進する選手もいる。いずれにしても掲げた目標がプレーする上でのモチベーションの1つとなり、大きな影響を与えているのだが、今季、これとは逆に明確な目標を持つことを“やめた”ことで成績を伸ばしている投手がいる。巨人の4年目左腕・中川皓太だ。

 打者の内角を鋭く突くストレートと、昨季は敵として対戦経験のある丸佳浩が「一度ラインから外れてゾーンに戻ってくる。角度がエグイ」と絶賛するキレ味鋭いスライダーを武器に、今季は開幕から16戦連続無失点投球を披露して、21試合登板時点でも失点はわずかに1。安定感のある投球で「最も力のある打者のところで起用したい」と原辰徳監督の信頼を勝ち得ているリリーバーである。

 現在、チームは8戦6セーブのR.クックが右ヒジ違和感のために戦線離脱中で、クローザー不在。主に8回を任されるようになった中川も指揮官の「(クックの穴は)リリーフ陣全員でカバーする」の方針の下、3セーブ(1勝8ホールド)を記録している。コントロールの良さと、堂々としたマウンドさばきにクローザーの適性をうかがわせるが、「そういう状況で出番が回ってくれば良い経験ですし、監督がおっしゃっているとおり、『全員でカバーする』気持ちで臨機応変に対応できればいいなと思っています」とこのチャンスにも欲を出さない。

 実は昨オフ、プロ入りから3シーズンを振り返り、「自分の持っている力以上のものを出そうとして空回りしていた」と猛省。今季を迎えるにあたり、「高望みせずに自分の持っている力、出せる力だけを出す」という意識への切り替えを行っていたという。「『もういいや』と。良い意味での開き直りです」。これが功を奏し、現在の好結果がある。

 目標についても同様の考えで、「細かく設定してしまうと、自分の持っている力以上のものを出そうと、欲が出てきてしまいそうなので。今できることをちょっとずつやる。それが自分の生き方なのかなと思います」と徹底している。

 ちなみに中川は東海大学出身で、菅野の後輩に当たる。プロ入り後、オフは毎年菅野に弟子入りし、このオフも自主トレ先のハワイで多くの時間をともにして、さまざまなことを吸収しているが、“目標”についてのとらえ方がまったく正反対なのが面白い。「終わっていたらこうなっていた、というのがベスト」と語る、無欲の左腕が、今後、どこまで成績を伸ばすのか。注目したい。

文=坂本 匠 写真=BBM
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