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【MLB】カーター・スチュワートを契機に新たな獲得&育成の流れに期待

 

記者会見に臨んだスチュワート。両親とともに笑顔で写真撮影を行った



 1年前、ブレーブスに一巡8番目でドラフトされた高卒右腕、19歳のカーター・スチュワートが、ソフトバンクと複数年契約した。スチュワートは日本に10日間滞在、施設を見た上で決めたそうだが、アメリカのトップアマチュア選手がやってみようと思う環境を備えていたこと、さらに報道にある6年700万ドルを出せるほど、アメリカのアマ選手を調査していたことがすごい。 

 メジャー球団と互角に渡り合う気概を持ったチームが増えればと思う。とはいえ日米間のトップタレント争奪戦を期待しているわけではない。今回このような事態になったのは、市場価値を無視したMLBのドラフトシステムゆえだ。2009年、ドラフトトップ指名投手スティーブン・ストラスバーグについて、スコット・ボラス代理人は06年オフの松坂大輔争奪戦をヒントに大型契約を目指した。レッドソックスが松坂獲得にポスティングフィー5111万ドル、サラリー6年5200万ドルを積んでいたからだ。

 メジャー球団はトップタレント獲得にそこまで出せる。過去、ドラフト指名選手の最大契約はマーク・プライアーの1050万ドルだったが、それでは低過ぎた。ボラス代理人は8月の交渉期限のぎりぎりまで粘って4年1510万ドルの契約を勝ち取った。しかしながらそれでも市場価値より低かった。半年後の10年1月、キューバ出身、国際選手のアロルディス・チャップマンが6年3025万ドルでレッズと契約したのである。

 この状況は、ドラフトのルールが変わったことでさらに悪化した。例えば次回のドラフトのトップ指名候補オレゴン州立大のアドレイ・ラッシュマン捕手はもしFA選手なら総額5000万ドルから7500万ドルの契約を得ると予想される。だが現行のルールでトップ指名権を持つオリオールズの1位指名権のスロットバリューは841万ドル。同球団のトップ10巡指名権全部で使える金額も1382万ドル。それが上限である。

 スチュワートは、昨年の一巡8番目でスロットバリューは498万ドルだったが、手首のケガが見つかり、提示は200万ドル前後。ゆえに合意できなかった。次のドラフトは二巡指名の予想で、提示額も200万ドル以下。そこにソフトバンクがアプローチした。このルールが続くうちは、日本の球団にチャンスがあるのかもしれない。

 しかしながら、仮にこういった事態が続けば、MLBはルールを変えてくるだろう。資金力は日本と比較にならないのだから、目玉選手の争奪戦に勝ち目はない。むしろ考えるべきは、下位の契約金の少ない選手たちの獲得と育成だと思う。19年のドラフト、指名権のスロットバリューは六巡で30万1000ドルから23万7000ドル、七巡で23万5000ドルから18万7000ドル、八巡で18万6000ドルから15万9000ドルである。

 これまでアメリカ選手はこれを受けるか、独立リーグに行くしか選択肢がなかった。そこに日本の球団が色を付け、総額100万ドルの複数年契約を提示すれば、結構良い選手を引き抜けるのではないか。

 ちなみにあのマイルズ・マイコラスは09年の七巡で契約金12万5000ドル。新しい流れを作れればと思うのである。

文=奥田秀樹 写真=湯浅芳昭
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