読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代に巧打の選手として活躍した、元ソフトバンクの柴原洋氏だ。 Q.最近のプロ野球選手はみな、バッティング手袋をして打席に立っていますが、かつては三冠王3度の落合博満さんのように、素手で打つ選手も多かったように記憶しています。手袋をするのと素手、それぞれの良い点と悪い点を教えてください。(埼玉県・58歳)
A.どちらを選択するかは選手個人の好みです
面白い視点だと思います。確かに今のプロ野球では、みなバッティング手袋(※ここからは手袋と表記)を着用しています。社会人や大学生はもちろん、高校生でも、かなり前に公式戦で着用が許されて以降、多くの選手が当たり前に手袋(高校野球対応モデルというものも市販されています)をしていますね。
なぜ手袋をするのか。一番はバットの握りやすさに関係していると思います。質問の方が例に挙げた落合博満さんは、素手に粉(ロジンバック)のすべり止めをつけてバットを握っていましたが、手袋をかますのではなく、直にグッと握ったほうがフィーリングが良かったのだと思います。また、別の手袋をしない選手からは、手袋が手首のあたりでマジックテープで止める仕様になっているため、「手首がロックされて嫌だ」という話を聞いたことがあります。手首を柔らかく、ハンドリングをうまく使う選手、手首の返しに繊細な感覚を持っている選手には確かに抵抗があるのかもしれませんね。
私は木製バットに持ち替えた大学生のころから手袋をするようになりましたが、一番の理由は素手だと滑りやすく感じたからです。夏場など、汗をかくと余計に滑るので、手袋をして、松ヤニや滑り止めスプレーをバットや手袋につけていました。ベタベタになるくらいすべり止めをきかせて、グッと握るのが好み。というのも、握力がそれほど強くなかったため、手袋と滑り止めの合わせ技でカバーしたいと考えていたからです。
ちなみに、一度、素手でも試してみましたが、手の皮がめくれたりするので、それ以降、薄めの皮のタイプの手袋を着用するようになりました(左打ちの私の場合、右手にたっぷり、左手に少量の滑り止めがベスト)。私が使用していた薄めの皮のタイプのほかに、厚めのタイプもあって、これは完全に好み。ただ、どんなに薄手のタイプでも素手に1枚かんでいる状態なので、バットのグリップをこれに合わせて少しだけ細く加工をしてもらっていました。
このように、素手、手袋にはそれぞれ良い点があって、どちらを選択するかは選手個人の好みです。滑り止めの使用、量も人それぞれで、より打ちやすい環境を作って、打席に立っているので、そういう部分にも注目してもらえると、面白い発見があるかもしれませんね。
●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。
写真=BBM