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ベースボールゼミナール

「ストレートの質がいい」とは?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.プロや高校野球など野球中継を見ていると、「ストレートの質がいい」という表現をよく耳にします。ここでいう質とはどのようなものですか。また、実際に質を高めるためにはどうすれば(どんな練習をすれば)いいのですか。(広島県・14歳)



A.ボールの伸び、ベース上での強さ、威力が重要


2005年、火の玉ボールと呼ばれる直球を投げていた阪神の藤川


 ここではあえて日本での基準で、かつ純粋なオーバーハンドのピッチャーの場合を想定して解説しますが、この場合、私が考えるのはボールの伸び、ベース上での強さ、威力です。

 これを可能にするのはボールの回転数と傾きで、いわゆる地面に垂直なきれいなバックスピン(傾きが少ない)のかかった、回転数の多いボール(主にフォーシーム、ストレート、直球と呼ばれるものです)は、そのボールに浮力が働いて自然に落下していく軌道とは異なり、その落ち幅が少なくなって、浮き上がるような軌道を描きます。バッターは打席である程度の軌道を予測して打ちにいくのですが、質の良いストレートはこの予測よりも高い位置を通過することが多いですね。バットの上を通過するか、当てられてもバットの上っ面に当たって後方へのファウルとなります。

 イメージしやすいのが阪神の藤川球児選手のフォーシームでしょう。特に2000年代前半の、阪神が優勝争い(05年は優勝)に頻繁に絡んでいた時代の藤川選手のフォーシーム(火の玉ボールなどと呼ばれていました)は、映像で見ていても本当に浮き上がるような軌道を描いていました。

 現在はMLBの影響もあって、これとは正反対の手元で動くファストボールもよしとされる時代ですが、あえて「ストレートの質」にこだわりたいのであれば、まず大切にしてほしいのがボールのグリップ(握り)です。中指と人さし指をピタリとくっつけつつ指の腹部分を縫い目にしっかりとかけて握り(※指一本分程度を空けて握るのが一般的で、こちらのほうが安定感は増しますが、質と威力を高めるならくっつけることをススメます)、その縫い目にグッと力を入れるようにリリースして、スピンをかけてあげます。優しく離してはいけません。

 そのためには握力に加えて、指の力の強化も必要でしょう。プロがやるのはライスバケットです。バケツの中にお米や大豆を入れておいて手を突っ込んで握ったり、挟んだりを繰り返します。これを繰り返すことで、前腕から指にかけての筋力が鍛えられるのです。

 ちなみに、ややヒジの位置が低い巨人菅野智之選手のストレートの質も抜群で、これには別の理由があるのですが、これについてはまた別の機会で解説します。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

写真=BBM
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