夏本番を前に、精悍な表情を見せる早実のエース・伊藤。最速143キロだが、球速表示以上のボールのキレで打者は差し込まれる
体全体を使った躍動感あるフォーム。打者の手元で、グイッと伸びるストレートが魅力的であり、
伊藤大征の生命線でもある。
4年ぶりの夏の甲子園出場を目指す早実(西東京)の右腕エースだ。
1年夏から登板経験を重ね、2学年上の
清宮幸太郎(
日本ハム)、1学年上の
野村大樹(
ソフトバンク)と2人のキャプテンの背中を見てプレーしてきた。
兵庫県出身。中学時代は
田中将大(
ヤンキース)も在籍した宝塚ボーイズでプレー。先輩譲りの強気のピッチングを継承し、精悍な顔つきからも、負けず嫌いの性格がにじみ出ている。
昨夏は西東京大会4回戦敗退。新チームの秋は東京大会4強、今春は同8強と、見据える夏の目標は頂点のみだ。
冒頭の真っすぐの球質は
楽天・
則本昂大、
オリックス・
山本由伸を理想としており、スライダー、チェンジアップ、カーブの変化球も精度を上げている。
「全員の力で何とかつないで、相手一人ひとりを抑えていければ。チーム全体の力で勝って、甲子園に出場して、地元に戻りたい」
王貞治記念グラウンドの左翼後方にあるブルペンでは、集中力を高めたピッチング。パチーン!! 白球がミットに吸い込まれる音が、心地良い。1球1球に魂を込め、実戦さながらの緊張感ある空気が流れていた。
身長170センチと、決して体格に恵まれているとは言えない。しかし、伊藤には学校生活と部活動を真剣に向き合ってきた「頭脳」がある。中学時代、早実を志望したのは「文武両道の最高峰」であり「野球だけではなくて、学生の一番の本分は学業なので頑張りたい」と続ける。
西東京大会は7月6日に開幕。第3シードの早実は3回戦から登場する。4年ぶりの甲子園まで6試合、伊藤は腕を振りまくる覚悟だ。
文=岡本朋祐 写真=BBM