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オリックス・山本由伸の“高速変化球”のヒミツ

 

防御率1.66、被打率.191は、いずれもリーグトップ。オリックス山本由伸が“高速変化球”で打者を牛耳っている


 圧巻の完封劇だった。6月28日の西武戦(メットライフ)でオリックスの山本由伸が5安打11奪三振でプロ初完封。12球団トップのチーム打率を誇る“山賊打線”をねじ伏せた。

 目を見張るのは、やはり“球威”だ。この日のストレートの最速は155キロを計測し、アベレージは151キロ。他の球種を見ても、ツーシーム=平均152キロ、カットボール=同149キロ、フォーク=同144キロ、スライダー=同144キロと、驚異の球速を誇る。それだけにカーブの同124キロの効力は、数字を見ても明らか。緩急も自在に防御率リーグトップの防御率1.66、被打率.191と打者を圧倒している。

 中でも昨季に習得したカットボールは、変化量が小さく動く球種とあって、バットの芯を外して、“打ち取る球種”としても効力を発揮しているが、その握りを右腕に見せてもらうと“真っすぐ”と、同じ握りだった。理由は明確で、本人は曲げる意識はないという。

「曲げようと思うときほどボールが曲がらない。だいたい、そういうときに限ってホームランを浴びたりするんです。だから、極端に言えば曲がらなくてもいい。『曲げようと』意識し過ぎて曲がらずに“半速球”になるくらいなら、思い切り腕を振ったほうがいいと思うんです」

 カットボールは直球と同じ握りだからこそ、スピードも落ちることはない。速く、かつ動くボールのヒミツは、そこにあるが、ほかの球種の握りを見せてもらっても、直球からやや握りを変えたものばかり。140キロ台を計測するフォークの握りも浅く、「真っすぐ(の握り)がベース」だ。

 曲がり幅の大きな変化球に周囲は魅了されるが、投手たちが肝に銘じているのは「打者に真っすぐと思わせること」。むろん、山本も同じ考えを持っている。

 腕の振りも直球と変わることなく、そして握りのベースもストレート。だからこそ生まれる“高速変化球”――。コンマ数秒で球種、コース、高低を判断する必要がある打者は、たまったものではないだろう。

文=鶴田成秀 写真=内田孝治
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