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縁の深い神奈川で恩返しを誓う橘学苑高・水上善雄監督/令和元年の夏、初陣の新指揮官

 

現在、『夏 甲子園2019全国49地区総展望』が発売中だ。同誌の中で令和元年の夏、初陣を飾る指揮官を取り上げているが、週刊ベースボールONLINEでも公開しよう。

目指すのはプロでもアマでも通じる野球


桐蔭学園高出身で、卒業後はかつて川崎を本拠地としたロッテで14年間プレー。神奈川には特別な愛着がある


 まさかこんなに早く、高校野球の指導者になれるとは――。昨年までソフトバンクの一軍コーチだった水上善雄は、今年4月から橘学苑高を率いている。

「ソフトバンクを退団し、今度はアマチュアを指導したいと思い、今年2月に学生野球資格を回復しました。3年後の65歳くらいまでに高校野球の指導者になれればいいな、と。でも元プロで実際に高校野球の現場にいるのは50人程度。それが狭き門であるのも知っていました」

 ところが日本プロ野球OBクラブを通じて、橘学苑高が監督を探しているという情報が入り「縁あって、私がお受けすることになったのです」。水上監督は桐蔭学園高出身で、かつて川崎球場を本拠地としたロッテにも在籍。

「私を育ててくれた神奈川の学校、というのも縁を感じましたね。これは恩返ししなさい、ということなのか、と」

 ロッテ時代は大型遊撃手として活躍し、日本ハムでもコーチを務めた元プロ監督への、学校関係者の期待は大きい。どんな野球をするのか? 水上監督は「あくまで“当たり前の野球“をやるつもりです」と言う。

「当たり前の野球、とは、例えばヒットを打ったら、それでよしとするのではなく、しっかりオーバーランをして、二塁を狙うぞ、という姿勢を見せること。そうすれば、外野手も内野手も慌てますからね。ベースに戻るのはボールが内野に返ってきてから。私が目指しているのはこういう基本的な、プロでもアマでも通じる野球なんです」

甲子園は素晴らしい場所


現役時代は大型遊撃手として鳴らした


 橘学苑は2017年春の県大会で8強に進出しているが、練習環境に恵まれているとは言い難い。グラウンドは両翼が約30メートルしかなく、実戦を想定した練習はできない。また練習時間も平日は18時45分に完全下校と限られている。だが、水上監督は与えられた環境を前向きにとらえている。

「こうした中で、私がどれだけ選手たちのレベルを高められるか『野球の神様』に試されていると思っています」

 水上監督は1992年に現役引退後、07年に日本ハムのコーチになるまで、少年野球の指導に関わっていた。

「体育館など狭いところで指導した経験があるので、役に立っているような気がします」

 ソフトバンク二軍監督時代には、甲子園で指揮を執ったことがある。ウエスタン公式戦で、観客は2000人足らずだったが、それでも聖地に感動したという。

「当時、掛布雅之さんが阪神の二軍監督をされていましてね。『水上、甲子園はいいだろう』と満面の笑顔で声をかけてくれたんですが、甲子園はやはり、素晴らしい場所でした」

 高校3年夏は県大会準々決勝で原辰徳を擁す東海大相模高に敗れた。だが、この試合で4打数4安打したことにより、プロへの扉が開かれた。最後の夏に持てる力を発揮した水上監督は、その術も選手たちに伝えていく。

PROFILE
みずかみ・よしお●1957年8月9日生まれ。神奈川県出身。桐蔭学園高から76年ドラフト3位でロッテ入団。80年にダイヤモンドグラブ賞、87年にはベストナイン。90年に広島に移籍し、翌年はダイエーでプレー。92年限りで現役引退。NPB通算1546試合、打率.244、105本塁打、450打点。解説者などを経て、2007年から日本ハム二軍コーチ。08年から2年間は二軍監督。14年からソフトバンク二軍監督などを歴任し、18年は一軍内野守備走塁コーチ。今年4月1日付で橘学苑の監督に就任した。

文・写真=上原伸一
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