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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

“奥の手”チャンステーマ・サウスポーの行方は?

 

サウスポーの「お前」問題のゆくえは……


中日の外野応援席で、懸命に応援するファン



 応援歌、とりわけチャンステーマには“格”がある。各球団の応援団は、チャンステーマを複数曲持っているが、その中でも役割があり、試合の状況によって使い分けられる。そうして次第に“格”が生まれていくのだが、今話題の中日のチャンステーマ1……通称“サウスポー”の格は、最上位にあたる。

 現在、中日の応援にはチャンステーマが5種類あり、たとえばチャンステーマ4は、打線が爆発し、大差をつけながらなおもチャンスの場面など、追い打ちをかけたいときに使われる。では、サウスポーはどこで使われるのかというと、試合の行方を左右する、どうしても点が欲しい場面だ。同点で迎えた9回裏のチャンスなど、絶対に点を取らなければいけない、ここぞの場面で発動される。いわば奥の手に近い。サウスポーは、そういう位置づけのチャンステーマだ。

 だからこそ、「お前が打たなきゃ誰が打つ」の「お前」というフレーズを不適切とした、応援団によるサウスポーの使用自粛に関して、ファンからは様々な意見が飛び出している。この使用自粛には少々複雑な経緯があり、順を追ってたどっていくと、
球団サイドから応援団へ「お前」部分の変更を求める→しかしサウスポーの歌詞はすでに浸透しているためシーズン中に変更して周知させることは難しい。スタンドのファンの混乱を招いてしまう可能性もあり、今シーズン終了後の変更ではどうかと応援団が持ち掛ける→「お前」部分を名前に変えるだけでもよいと球団サイドから強い要望がある→アルモンテ小笠原慎之介など、音数の関係で対応が難しい選手もいるため、応援団はシーズン中の変更を断念。自粛を決定。
という流れだ。

 突然、今まで使ってきた、それも奥の手のチャンステーマが使えなくなってしまったことを残念がるファンは多い。サウスポーは使われる場面が場面だけに大いに盛り上がるし、「お前が打たなきゃ誰が打つ」というフレーズがプリントされた球団グッズも販売されているほど、ファンの中には広く浸透しているチャンステーマだ。「どうしていまさら」と不満が出るのも無理はない。

 しかしひとつ忘れてはならないのは、応援とは、選手に気持ちよくプレーしてもらうため、心強く思ってもらうためのものであるということ。現場の意見を代表して与田監督が「名前で呼んでほしい」と要望しているのだから、それを応援団側、ファン側が突っぱねては、そもそも“応援”が成立しなくなる。応援団員の男性は、「勝利のために、選手の力になる応援をするのが応援団。サウスポーを楽しみにしてくれているファンの方には申し訳ないが、グラウンドからの要望があれば採り入れていきたい」と話し、苦渋の決断だったことを明かしてくれた。
 
 前述の応援団員の男性は、サウスポーの使用再開などについて「すべて未定」と話し、不透明だと言う。サウスポーの使用自粛を残念に思うファンの気持ちも分かるが、使用自粛を決めた以上、今後はサウスポー以外のチャンステーマで選手を後押しするしかない。代わりと言ってはなんだが、今シーズンから登場した新チャンステーマ「決めてくれ」は、サウスポー同様に“奥の手”格のチャンステーマだ。ファンの方には、いつか来るかもしれないサウスポー復活の日まで、「決めてくれ」やほかの応援歌で、その穴を埋めるだけの声援を送り続けてほしいと思う。

文=依田真衣子 写真=BBM
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