昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 コラム名は右向け右
今回は『1967年12月25日号』。定価は60円。
巨人・
川上哲治監督がH紙(雑誌ではイニシャルも間違いなく報知新聞だろう)に「右向け右!」と題したコラムを掲載。その中の評論家を批判した箇所が物議をかもしていた。
抜粋する。
「現役での活躍が五、六年。大した成績を収めずにマイクや原稿用紙に向かっている人がいる。もちろん監督、コーチ経験が無である。こんな人たちがファンに対して野球を語る。自分の体験からの話ならまだしも、なかにはコーチや監督の心理状態まで踏み込んでくる。こちらにしてみれば笑止であり、迷惑である」
さらに現役時代、まるで走らなかった選手がマイクの前で「全力疾走が足りない」と言ったり、アメリカの野球を少し見ただけで「本場では」「向こうでは」とやたらに言う評論家を川上は、
「始末が悪い、うわっつらの評論家だ」
と書いた。また元巨人の評論家に対しては、
「巨人から出て評論家になった人は、ほとんど何かの感情を私に持っている。私のほうはまったく門を広げ、いつでも歓迎するつもりなのだが、狭量な人は私のほうに近づいてもくれない」
元巨人、アメリカ帰り、コーチ経験なし。間違いなく、ターゲットは
広岡達朗だろう。
広岡も「あれは僕のために書いたのと違うかな」と言いつつ、
「こっちが相手になるような話じゃない。まず内容がマジメじゃない。監督の立場から評論家を斬るということ自体がおかしい。あれを読んで感じたことは、この人はさびしい人だなということです」
かなりの上目線だ。
なお、広岡は東京からコーチにと声をかけられていたが、正式に断った。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM