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【MLB】強い打球を許さない、チェンジアップで投球レベルが上がった前田健太

 

チェンジアップの精度がさらに上がったことで投球に幅ができ、打者の打球も力のないものが多くなっている


 MLBスタットキャストのリーダーボードで、今季先発投手が打たれた打球の平均速度を調べるとドジャースの前田健太が平均84.7マイルで、ツインズのマーティン・ペレスの84.5マイルに次ぎ2位につけている(現時点で150個以上の打球を打たれた投手)。

 3位はドジャースの柳賢振の85.5マイル、5位にツインズのホセ・ベリオス、6位にブレーブスのマイク・ソロカと今季活躍中の投手が並ぶ。強い打球が少ないということは長打率が低くなっているということ。

 前田のメジャー2年目の長打率は.423、3年目は.399だったが、今年は.376。6月23日のロッキーズ戦、そんな今年の投球内容が裏目に出かかった試合があった。0対1、3回二死一、二塁のピンチ。外角ボールになるチェンジアップで左打者マクマーンのバットを折り、75・3マイルの緩い打球は遊撃手の定位置へ。ところがシフトで誰もいなかったため、適時打になった。

 この回、前の2本のヒットも緩い打球(69.8マイルと77.2マイル)で「弱い当たりのヒットが続いて点を取られると、投手は切り替えにくい。ストレスがたまる」と前田。そんな前田を励ましたのが遊撃手のキケ・ヘルナンデスだった。

「キケが何回も来てくれて、弱い当たりだから気にするなと。お陰で集中することができました」。4回以降は4イニング、1安打2四球で無失点。粘った甲斐があり7回裏逆転3点本塁打が飛び出し、一旦は勝ち投手の権利を得た。リリーフ投手が打たれたため8勝目はならなかったが、9回裏のサヨナラ勝ちに「粘れば逆転してくれると思っていた。7回まで投げられて、チームも勝てたので良かった」と笑顔だった。

 この日のポイントはチェンジアップだった。3回から5回、真っすぐがわずか10球、スライダーが12球、チェンジアップが20球。ドジャー・スタジアムのデーゲームは打球がよく飛ぶ。初回、真っすぐをソロホームランされ、それが配球に影響したのかと聞くと、こう説明した。

「走者が出ていたので、どうしてもチェンジアップに頼った。高めに浮くことがないし、ボールになるとしてもワンバウンドか、低めに投げられる。バッターが打ったとしてもゴロのシングルで終わる」

 この日のように運悪く失点することもあるが、大ケガはしない。スタットキャストのデータによると、前田のチェンジアップは今季メジャー平均よりタテに2.8インチも落ちている。16年、17年のチェンジアップはサークルチェンジで平均よりも落ちていなかったが、昨季からスプリットのように挟んで投げるようになり、昨季が2.2インチ、今年はさらに落ちている。

 この試合では一転、6回と7回は真っすぐ中心となり2イニングをわずか12球で抑えた。「逆にそのあとはそれ(チェンジアップの残像)を利用して、ストレートも使えた。うまく使い分けられた」と言う。 

 2年目、3年目の前田は一番得意なスライダーを徹底マークされ苦しんだ。だが今季はスライダーの被打率が.159と4年間でベストの数字。すべてが相まって投球レベルが上がっているのだ。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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