昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 元祖カープ女子? ほえる
今回は『1968年1月1日号』。定価は60円。
きょうは、この号に関し、午前中に1本アップしたが、ついでにもう1本。
1967年、最下位に沈んだ
広島カープに対し、雑誌「酒」編集長・佐々木久子女史が寄稿した「泣くなカープ! 怒れカープ」の一部を抜粋する。
以前、
古葉竹識との対談でも登場したが、佐々木女史は、カープが万年Bクラスの時代、必死に応援し続けた方だ。“広島カープを優勝させる会”の中心的メンバーとしても知られる。
原稿を流れに従い、つまんでいく。
まず、こう始まる。
ここ二月ばかり、会う人ごとに言われる挨拶は、佐々木さん、広島カープはどうなるんですか?
ということばかりである。
前年最下位になり、監督問題でもめていただけではない。
球団創設当時から続く、財界、後援会など、いわゆる市民球団としてやっていくスタイルから、筆頭株主だった東洋工業一社が親会社になるスタイルに変わるかどうかで騒がれていた。
この人、誰に対しても容赦ない。
まず、広島ファンに対して
俗にいうヒイキのヒイキ倒しというやつである。
可愛くてしようがないのだが、自分の感情を抑えることができなくて、負けても勝ってもその渦の中に自己投影をしなければ気がすまない。
広島─巨人戦のテレビ中継を見ていると、恥ずかしくてスイッチを切りたくなるような、口汚いヤジを飛ばす。それもNHKのときは、わざとのように輪をかけてひどいのである。
さらに、カープの選手に対して、
今年のカープはあまりにだらしなさすぎた。弱いというより、やる気があるのかないのか、それすらもわからないほど無気力に見えた。男としての意地も執念も、肝心なプロ野球選手としてのプライドも、感じることができないほどだった。
と斬りまくる。
この一文の後、いきなり巨人ファンへの怒りの攻撃へ入り、筆がさらに過激に踊る。
後楽園球場へ行っていると、巨人ファンが、
「広島のいなかっぺ、草野球の最下位チーム、お前たちはプロじゃないよ」
とわめき続ける。
大の巨人嫌いで、カープファンである私の顔はよく知られているので、巨人ファンは私の背中に、
「ざまあみろ、広島カープ、もうカープは解散だな」
と罵声をあびせかける。
もっとひどいのになると、一緒につれていったうちの社の女の子のお尻を蹴っ飛ばしたりする卑劣な男もいるのである。
東京というマンモス都市は、地方から喰うや喰わずで上京し、一旗あげようと志してきた人間どものはきだめみたいなところである。
自分たちが田舎ものであることも忘れて、さも、自分たちが巨人のように強いのだという、しばしの虚構の中に、己をおいて虚勢を張ってみせるのだ。
従って、これは根なし草のようなもので、巨人が弱くなったら、あるいは負けていたら、ウンともスンとも言わなくなるのである。
弱いカープを応援することは、ただもう忍の一字、どんなに口惜しくてもじっと歯を喰いしばって応援するだけである。
以下は最後の結びに至る部分だ。
カープの選手よ、心あるファンは、あなたたちのより一層の奮起を期待している。
最下位であったことを恥じてほしい。田舎の草野球だときめつけられたことを口惜しがってほしい。マスコミにノンプロ以下だと書かれたことに対しても、大いに怒ってほしい。
負けることが当然のような顔をしないでほしい。男なら、怒りを爆発させ、火の玉となって優勝へ向かって突進してほしい。
球団経営がどうであれ、首脳人事がどうであれ、あなた方選手には関係ないことである。
あなたたちは、プロ野球選手としての技術を磨き、より高いものに向かって精神を培い、きたるべきシーズンに備えて、がっちりと鍛錬すべきです。
もし、これは、たとえのはなしだが、来季、広島球場に一人もお客が来なくても、あなたたちは泣くことはない。勝つことによって、背信していったファンをひざまずかせればいいのである。泣くときは“優勝”のペナントを手にしたとき、そのときは、みんなで泣いて泣いて泣き明かそうではありませんか。
その日までは、愛するカープよ、怒って怒って、怒り狂え。
頑張れ、新生カープ!!
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM