昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 柴田勲はプレーボーイじゃない?
今回は『1968年1月8日新春特大号』。定価は70円。
巨人・
金田正一と美空ひばりの豪華対談があった。
ひばりが「おにいちゃん」と言えば、金田は「お嬢」。本当の兄妹のように仲がよかった。
少しやり取りを紹介しておく。
金田 よく励ましを受けたよ、ワシの悪いときにな。いいときはそっぽ向いているけど、悪いときによう励ましてくれたね。
ひばり おにいちゃんも同じなの。親子が何か悩んでいるようなときは、必ず電話をかけて飛んできてくれる。野球界と芸能界と、たいへん違っているようでも実際はすごく似ているでしょう。生きていく信念というものがね。だからおにいちゃんがしょぼんとしてたり、体がどうのこうのと悩んでいると、目標を失ったような感じでね。
お嬢というのは、誰を目的にしていますかってよく聞かれるの。どの歌い手でもだれだれって芸能人の名前を言いますよね。でも、わたしはそれがなかったんです。でも、いつも言うのは、おにいちゃんって素晴らしい人だ、私はあんなふうになりたいって言ってるからね。
そんなとき、おにいちゃんが照れても、私は素直にそう思っているというのよ。おにいちゃんがバテちゃうと目標がなくなるんだから頑張ってね、ってよく電話したり、電報打ったりするの。おにいちゃんが元気で成績のいいときは、あまり電話かけたり電報打ったりしないの。おにいちゃんのやり方と一緒なの。
金田 僕はね、お嬢の歌を唄っている姿なり、またいまこうして話をしている姿によって、野球というものをやり抜くんだ、勝たにゃいかんという、新たなファイトがわいてるのよ。ほんとは、ここでしぼみこんでしまえば、もう終わるような野球人生やけどね。ここで新たなにファイトを燃やして、突っ張って突っ張って、どこまでのこのイメージをこわさないように、これをやっていこうという気持ちがある。まだまだ肉体の続く限り、ダーッと自分を出していくよ。ワシはお嬢を尊敬してるからね。
美空 えーっ
金田 お嬢は日本で一番の女や。
サン
ケイ監督に、
川上哲治と因縁がある
別所毅彦が就いたことで、同じマスコミ球団である巨人×サンケイの対立が話題になっている。
別所監督は、まず秋季キャンプでスパルタ式の猛練習を命じた。
「こんな無茶な練習がいつまで続くと思っているんだ。いまに内紛が起こるよ」
とベテラン選手がこぼしたが、実際、捕手の
岡本凱孝が移籍を志願し、退団している。
取材規制も行い、記者たちが「まるで川上のマネではないか」というと、
「冗談言っちゃ困る。あのころの巨人の厳しさをつくったのは私だ。似ていて当然だ」
と別所監督はギロリと目をむいた。
12月1日からの自主トレも自主とは名ばかり。全員参加でしごきまくったようだ。
オフに入って、巨人・
柴田勲を新聞社が完全マークしていたという。野球ではない。「結婚間近」のウワサがあったからだ。
甘いマスクもあって、週刊誌などで盛んに女性ネタが書かれ、すっかりプレーボーイのイメージが定着していたが、本人は、
「俺ぐらい週刊誌や雑誌のイメージと違う男はいないんじゃないか。現代っ子、プレーボーイと言われてもかまわないが、嘘を書かれるのは困る。初めてのうちは訴えようかと思ったこともあったが、そのたびほんの数行謝罪文が載るだけだ。遊んでないとは決して言わないが、打てば節制したからだとか、打たなければ不節制しているからとか、まったくバカバカしいよ」
結婚については、
「いまは予定はない。ただ、周囲の人が楽しんでいるように俺も楽しみだよ」
小川健太郎(
中日)、
黒江透修(巨人)らを生んだノンプロの立正佼成会が10月で休部。兼任監督をしていた
金博昭、投手の
若生和也が小川の口利きもあって中日にドラフトで指名され、入団が決まった。
では、また月曜に。
<次回に続く>
写真=BBM