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高校野球リポート

佐々木朗希が掲げる甲子園への3つの“条件”

 

大船渡高の163キロ右腕・佐々木朗希は遠野緑峰高との県大会2回戦で2回無失点に抑え、チームは5回コールド(14対0)で突破している


 佐々木朗希のチーム35年ぶりの甲子園出場を目指す戦いが始まった。大船渡高は7月16日、遠野緑峰高との2回戦を14対0の5回コールドで勝利。先発した163キロ右腕・佐々木は2回をパーフェクトに抑えた。初回には先制適時2点三塁打を放ち、独特の緊張感が漂う初戦の流れを「四番・エース」が作っている。

 頂点まであと5試合。佐々木は岩手大会を勝ち上がる上での3つの条件を掲げている。

 まずは「省エネ投球」。2年秋までは「全球全力」で、1回からパワフル全開。しかし、それでは大会終盤にかけてはスタミナ切れしてしまうと、球数をセーブするピッチングを心がけてきた。つまりは、制球重視の意識だ。

佐々木は初回、一死一、二塁から右越え適時三塁打で2点を先制。四番のバットで自ら、試合のリズムを作っている


 佐々木と言えば、今年4月に「高校生最速」と言われる163キロを計測して一躍、全国区となったが、現段階でスピードに関心はないという。「1球出したことによって、自分のそういう記録として残るので。その分、気が楽だと思います」。球速よりも勝てる投手でないと、意味がないと考えている。

 この日も最速は147キロ。あくまで本人の目安だが「6割」の力で投げたという。つまり、全力で投げれば、軽く160キロは超える計算になる。やはり、規格外の超逸材だ。

 省エネ投球といえども、夏を乗り切るスタミナが必要。佐々木は「栄養」に気を使っており、持久力を高める「グリコーゲンローディング」を実践している。つまり、エネルギーの源となる炭水化物(糖質)を積極的に摂取。筋肉中や肝臓にグリコーゲンを蓄えることで、最大限のパフォーマンスを発揮できるというものだ。また、試合中も熱中症対策として、体温上昇に備え、クーリングにも気を配っている。佐々木はこの3年間で筑波大出身の理論派・國保陽平監督から専門分野を学び、一流アスリートとしての知識を身に着けている。

試合後は大勢の報道陣が取り囲んだ。佐々木は全国の高校球児で注目度No.1である


 栄養を摂取した後は「休養」である。睡眠時間をしっかり確保するようにしており、初戦の前日も9時間。たっぷり寝ることで、試合での集中力もより高まるのだ。

 さて、ポイントは次戦と言えるだろう。大船渡高は佐々木が入学した過去2年、ともに2試合目で敗退している。この鬼門を突破すれば、さらに勢いに乗るはず。一戸高との3回戦は18日に予定されている。決勝は24日。雨天順延もあり、9日間で6試合消化という超過密スケジュールを乗り越えなければ、1984年以来の甲子園には届かない。

 35年ぶりの悲願――。佐々木の甲子園への道は、始まったばかりである。

写真=井沢雄一郎
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