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夏の甲子園名勝負

“がばい旋風”佐賀北が8回裏の逆転満塁弾で初優勝!/夏の甲子園名勝負

 

いよいよ第101回大会を迎える夏の高校野球。1915年、つまり大正4年に始まり、昭和、平成という時代を経て、この夏が令和最初の大会でもある。昨夏、平成最後の大会となった100回までの長い歴史の中で繰り広げられた名勝負の数々を、あらためて振り返ってみる。

“普通の高校生”vs.プロ4人の“強豪私学”


逆転満塁弾を放った副島が本塁上で仲間と喜びを分かち合う


 2007年、夏の大会を一言で表すなら、“がばい旋風”が吹き荒れた大会、ということになるだろう。この「がばい」とは佐賀の方言。2000年代は何かと佐賀県が話題となった時期で、自虐ネタのコミックソングで存在感を発揮した(?)と思いきや、この07年の前後には小説から映画、テレビドラマの舞台として感動を呼んだ。これらにより、それなりに知られていた「がばい」という方言だったが、これを佐賀の言葉として全国に定着させたのは、この大会を制した佐賀北だっただろう。

 佐賀北にとっては7年ぶり2度目の聖地だったが、左サイドスローで身長163センチの馬場将史から右腕の久保貴大につなぐリレーが必勝パターン。この左右両輪の完封リレーにより開幕試合で福井商を下して甲子園初勝利を飾ると、勢いに乗った。2回戦は宇治山田商との延長15回引き分け再試合を制し、3回戦では前橋商に逆転勝利。準々決勝では帝京に延長13回サヨナラ勝ちを収めると、準決勝では長崎日大との九州対決を完封リレーで制して、決勝へとコマを進めた。

 対するはセンバツ3度の優勝を誇る強豪の広陵。野村祐輔(現・広島)、小林誠司(現・巨人)のバッテリーに上本崇司(現・広島)、そして主将の土生翔平(のち広島)と、4人のプロ野球選手を輩出するなど、充実の戦力で勝ち進んできた。県立校vs.強豪私学という構図となった決勝は、下馬評も広陵が有利という声が大勢を占めていた。そして、試合も広陵のペースで進んでいく。

 広陵は2回表、3連打で無死満塁の好機を作ると、併殺崩れで1点を先制。二死満塁からの適時打で、さらに1点を追加する。ここで佐賀北は早くも馬場から久保へスイッチして後続を断った。それまで無安打の久保だったが、7回表一死一、二塁から八番の野村に2点二塁打を許す。久保の大会初失点は、佐賀北にとっても痛い追加点となった。

“旋風”が運んだ逆転グランドスラム


“旋風”が吹き始めたのは8回裏だった。一死から久保が左前へ大会初安打を放つと、代打の新川勝政が右安打で続く。そこから2連続四球。押し出しで1点を返した。続くは三番の副島浩史。野村の3球目、真ん中へのスライダーを振り抜くと、打球は左翼席へ飛び込む逆転グランドスラムに。続く9回表は久保が3人で抑える。

 佐賀県勢としては1994年に続く全国制覇。満塁本塁打で優勝を決めたのは、この94年に史上初の決勝“九州対決”を制した佐賀商と同様だった。


2007年(平成19年)
第89回大会・決勝
第15日

広陵  020 000 200 4
佐賀北 000 000 05X 5

[勝]久保
[敗]野村
[本塁打]
(佐賀北)副島

写真=BBM
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